マガン

マガン（真雁）

マガン（Anser albifrons）は、カモ目カモ科マガン属に分類される鳥類です。ユーラシア大陸北部や北アメリカ大陸北部で繁殖し、冬季になると温暖な地域へ渡り越冬します。

分布

マガンの亜種ごとに繁殖地と越冬地が異なります。

ヒメマガン (A. a. albifrons): ロシア北部で繁殖し、冬季はイギリス南部、オランダ、ドイツなどへ南下します。
キバシマガン (A. a. flavirostris): グリーンランド西部で繁殖し、冬季は北アメリカ大陸東部、アイルランド、イギリス北部へ移動します。
マガン (A. a. frontalis): カナダ、アラスカ州、シベリア東部で繁殖し、冬季はアメリカ合衆国、大韓民国、中華人民共和国、そして日本（主に石川県、新潟県、宮城県）などへ南下します。
オオマガン (A. a. gambelli): 冬季はメキシコ、カリフォルニア州、テキサス州へ移動し越冬します。

形態

マガンの全長は65-86cm、翼開長は135-165cm、体重は2-3kgです。上面の羽毛は暗褐色で、羽毛の外縁が淡色です。腹部には不明瞭な黒い横縞があります。尾羽の基部を覆う羽毛（上尾筒、下尾筒）は白いです。額から嘴にかけて白い斑紋があるのが特徴で、種小名のalbifronsは「額が白い」という意味です。嘴はピンクや橙色で、後肢は橙色です。
幼鳥には額の白い斑紋や腹部の黒い横縞がありません。

分類

マガンの亜種は以下の通りです。

Anser albifrons albifrons (Scopoli, 1769) ヒメマガン
Anser albifrons flavirostris
キバシマガン
Anser albifrons frontalis
マガン
Anser albifrons gambelli
オオマガン

生態

マガンは湖沼、湿原、水田、池などに生息します。「キュユユ」「クワワワ」と大きな声で鳴き、飛び立つ時や飛翔中によく鳴きます。地上や水上では互いに首を水平に伸ばして「グァァァァ」と低い声で挨拶をします。

繁殖形態は卵生で、主にツンドラの低地の湖や河川のそばで繁殖します。3-7個の卵を産み、抱卵期間は24-28日です。雛は孵化してから35日ほどで飛べるようになります。

人間との関係

マガンは古くから日本人に親しまれてきました。『万葉集』にはマガンの夜に鳴く習性について詠まれた歌があります。

日本では、亜種マガンが狩猟によって生息数を大きく減らしました。そのため、1967年に「伊豆沼・内沼の鳥類およびその生息地」がマガンの越冬地として国の天然記念物に指定され、1971年には種としても国の天然記念物に指定され、狩猟が禁止されました。1970年には3,700羽だった日本への飛来数は、1997年には34,000羽と推定されており、保護の効果が現れています。

保全状況

マガン
準絶滅危惧（NT）（環境省レッドリスト）

関連項目

マガン属
鳥類天然記念物一覧
鳥類レッドリスト (環境省)
日本の野鳥一覧

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