薄田兼相

薄田兼相（すすきだ かねすけ）

薄田兼相は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将で、通称は隼人正です。彼は豊臣秀頼に仕官し、その名は多くの伝承に残されています。薄田兼相の背景には、講談で知られる岩見重太郎の存在があり、これは彼の前身とされているため、歴史的にも注目されています。

生涯

兼相の前半生に関する詳しい記録は残っていませんが、妹が堀田一継の妻であることが知られています（『寛政重修諸家譜』）。彼は豊臣家に仕官し、当初は秀吉の馬廻り衆として3,000石を領したと伝えられており、その後、さらに2,000石の加増を受けました。また、慶長16年（1611年）には禁裏御普請衆としての名も確認されています。

慶長19年（1614年）の大坂の陣にも参加し、特に冬の陣では浪人衆を率いて博労ヶ淵砦を守備していましたが、戦局が変わる中、遊女と戯れている隙に砦が陥落し、味方から「橙武者」と軽蔑されてしまいました。この異名は彼の勇敢さとは裏腹に、戦いの中での不適切な行動を反映しています。

夏の陣の道明寺の戦いでは、彼は渋皮色の鎧をまとい、星兜を被り、十文字の槍を掲げて出陣しました。黒毛の馬を駆り、戦況の最前線で戦いを繰り広げた結果、数多くの敵を討ち取る活躍を見せましたが、結局、押し寄せる敵軍に圧倒され、戦死してしまったと伝えられています。その後、彼の墓は大阪府羽曳野市の浅野家によって建立され、1996年には市の指定有形文化財に指定されました。

兼相は勇猛果敢な武将として名高く、兼相流柔術や無手流剣術の流祖ともされる存在です。

伝承

薄田兼相が岩見重太郎であるという伝説は広まり、彼の出生にまつわる物語も存在しています。岩見重太郎は小早川隆景の剣術指南役である岩見重左衛門の二男として生まれたとされ、父を同僚の広瀬軍蔵に殺されたことから、復讐のために各地を旅したとされます。この旅の中で、数々の武勇伝を打ち立て、最終的には広瀬を討つことに成功しました。以降、叔父である薄田七左衛門の養子となったとされています。

また、大阪市西淀川区の住吉神社には兼相に関する伝説が残っています。この地域は度重なる風水害や悪疫に悩まされ、古老の導きにより、毎年娘を辛櫃に入れ、神社に放置するという儀式が続けられていました。しかし、ある年、薄田兼相が通りかかり「神は人を救うもので犠牲にするものではない」と言い、自ら辛櫃に入ったというエピソードが語られています。翌日の確認で、辛櫃から続く血の跡が見つかり、大きな狒々が死んでいたという恐ろしい物語もあるのです。

登場作品

薄田兼相は多くの文学やメディアに描かれています。

• - 小説: 沙羅双樹『岩見重太郎』、二木英之『土竜の剣』、谷恒生『岩見重太郎･慶長水滸伝（三）雷雲』、司馬遼太郎『一夜官女』など
• - テレビドラマ: NHK大河ドラマ『葵 徳川三代』
• - 映画:『大坂城物語』

このように、薄田兼相は日本の歴史の中で特異な存在であり、多様な伝承や物語に包まれています。

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