薛顕

薛顕（せつ けん）：明初の勇将、その生涯と功績

薛顕（せつ けん、生年不詳 - 1387年）は、元末から明初にかけて活躍した軍人です。徐州蕭県（現在の江蘇省徐州市）の出身で、朱元璋に仕え、明朝の建国に貢献しました。その勇猛さと戦術眼は、数々の戦で発揮され、朱元璋からも高く評価されました。

初期の経歴と朱元璋への帰順

薛顕は、当初、徐州の趙均用に仕え、元帥として泗州を守備していました。しかし、1359年に趙均用が死去すると、泗州を明け渡し、朱元璋に帰順しました。この決断が、後の薛顕の運命を大きく変えることになります。

南昌防衛戦での活躍

1362年、薛顕は大都督の朱文正に従い、南昌の守備につきました。翌年、陳友諒の大軍が南昌を攻めると、薛顕は章江門と新城門の守りを担当しました。陳友諒軍の猛攻に対して、薛顕は防戦に努め、5月には新城門を開けて敵陣に突撃し、白兵戦で劉進昭を斬り、枢趙祥を捕らえるという大戦果を挙げ、敵軍を退けました。この戦いで、南昌を約3ヶ月間守り抜き、陳友諒軍を撤退させました。この南昌防衛戦での活躍が、薛顕の名を大きく高めました。

各地の攻略戦での武功

1365年、薛顕は新淦を攻め落とし、守将の鄧仲謙を斬りました。その後も、周辺の郡県を降伏させ、その功績により江西行省参政に抜擢されました。同年10月には、徐達に従い淮東を攻略し、1366年には常遇春と共に湖州を攻めました。さらに、徳清の攻略では軍船40艘を鹵獲し、敵将を捕獲するなど、数々の戦で武功を挙げました。特に、昇山の水寨を攻めた戦いでは、水軍を率いて敵船を焼き払い、大勝に貢献しました。この時の活躍を常遇春は「今日の戦は将軍の功である。私の力は将軍に及ばないだろう」と賞賛しました。その後の平江の戦いでも、諸将と共に活躍しました。

北伐と明朝建国への貢献

1367年、張士誠を滅ぼした後、薛顕は褒賞として綵幣と表裏を賜り、行省右丞に進みました。同年10月からは、徐達に従い北伐に参加し、沂州、兗州、青州、済州、東昌、棣州、楽安、河南、関陝、衛輝、彰徳、広平、臨清、徳州、長蘆と、各地を攻略しました。さらに、元軍を河西務と通州で破り、1368年には元の首都大都を攻略しました。その後も、大同を攻略し、山西を平定するなど、北伐において重要な役割を果たしました。定西の戦いでは、傅友徳と共に決死隊を率いてココ・テムル軍を打ち破りました。

晩年と不遇

1369年、薛顕は慶陽の戦いで敵の奇襲にあい、負傷しますが、敵を破り、功績を挙げました。しかし、1370年、薛顕は独断で役人を殺害したとして朱元璋の怒りを買い、永城侯の爵位を与えられながらも海南島に流罪となりました。その後、朱元璋の恩赦で召還され、再び任官されました。晩年は、北平での屯田や山西方面の軍務を担当しました。1387年にナガチュ討伐に参加しましたが、応天府に召還される途中に山海衛で病没しました。死後、永国公を贈られ、桓襄と諡されました。しかし、1390年に胡惟庸の獄に連座し、爵位を剥奪されました。

人物と評価

薛顕は、その勇猛果敢な戦いぶりから、朱元璋に「薛顕、傅友徳の勇略は軍中でも一番である」と称賛されました。数々の戦いで目覚ましい活躍を見せましたが、晩年は不遇な境遇に陥りました。しかし、その武勲は、明朝建国史に燦然と輝いています。

参考文献
『明史』
『明史紀事本末』
『国初群雄事略』
『続資治通鑑』

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