薫蓋クス

薫蓋樟（くんがいしょう）：千年の時を刻む巨木

大阪府門真市の三島神社の境内に根を張る薫蓋樟は、樹齢1000年以上と推定されるクスノキの巨木です。その圧倒的な存在感は、訪れる人々を魅了し続けています。1938年には国の天然記念物に指定され、大阪府内はもちろん、日本国内でも有数のクスノキとして知られています。

土地と歴史

薫蓋樟が位置する門真市三ツ島地区は、古川が流れる温暖な低湿地帯であり、クスノキの生育に適した環境です。かつて山王権現と呼ばれた三島神社は、天照皇大神、大己貴命、素盞嗚尊の三神を祀る氏神として地域の人々に大切にされてきました。薫蓋樟は、まるで社殿を覆うかのように枝葉を広げ、神社の神聖な雰囲気を一層高めています。

巨木の姿

薫蓋樟の幹回りは13.1メートル、樹高は約25メートルにも達します。根元には不規則な凹凸が見られ、黒ずんだ幹には大きなこぶが点在。主幹から分かれた5本の大枝は、うねるように四方へ伸びています。東西34メートル、南北33メートルに及ぶ枝張りは圧巻です。地上2メートル付近には注連縄が張られ、その少し上には直径30センチメートルほどの穴が開いており、かつては子供たちの遊び場だったそうです。

名前の由来

「薫蓋樟」という名前は、木の根元にある石製の歌碑に刻まれた歌に由来します。「薫蓋樟 村雨の雨やどりせし唐土（もろこし）の 松におとらぬ樟ぞこの樟」と詠んだのは、江戸時代末期の公卿で歌人でもあった千種有文です。

地域とのつながり

地元の人々は薫蓋樟を「クスノキさん」と呼び、敬っています。毎年10月には秋祭りが行われ、地域住民の心のよりどころとなっています。大正時代には、電灯設置の際に枝先を伐採したところ、伐った人が腹痛を起こしたという逸話も残っています。昭和時代には、宅地化や道路舗装による地下水の減少で樹勢が衰えましたが、1974年に地元の人々が保存会を結成し、境内に掘割を作るなどの対策を行った結果、樹勢を取り戻しました。

さらなる栄誉

薫蓋樟は、1990年の「国際花と緑の博覧会」に合わせて企画された「新日本名木100選」に選定されたほか、1989年の「大阪府みどりの百選」では人気ナンバーワンに輝きました。2012年には、巨樹研究専門家による「神秘的な巨樹ベスト10」で第9位に選ばれています。門真市では、薫蓋樟以外にも多くのクスノキが自生しており、1973年にはクスノキが「市の木」に選ばれました。

アクセス

薫蓋樟へは、京阪電気鉄道京阪本線門真市駅からタクシーで約10分、またはOsaka Metro長堀鶴見緑地線門真南駅から徒歩約15分です。

千年の時を超え、今もなお生き続ける薫蓋樟。その雄大な姿は、私たちに自然の力強さと、地域の人々の愛情を感じさせてくれます。門真市を訪れた際には、ぜひその目で確かめてみてください。

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