藁谷勇三郎

藁谷 勇三郎

藁谷 勇三郎（わらがや ゆうさぶろう）は、1877年（明治10年）4月24日に福島県で生まれた日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍大佐でした。旧会津藩士族の三男として育ち、会津中学を経て、軍人の道を志します。

軍歴と経歴

1898年（明治31年）に陸軍士官学校（第10期）を卒業し、翌年6月には歩兵少尉に任官して歩兵第29連隊に配属されました。その後、陸軍の教育機関である戸山学校で教官を務め、将校採用試験に関わる常置委員も歴任しました。また、歩兵第15連隊の大隊長、歩兵第59連隊への勤務を経て、松本連隊区の司令官など、様々な要職を経験しました。1922年（大正11年）には予備役に編入されています。

軍人として、日露戦争やシベリア出兵といった重要な戦役にも従軍し、その功績により功五級の勲章を授与されています。

教育者・著者として

特に戸山学校の教官時代には、陸軍歩兵の戦術研究や教育に深く関わりました。藁谷は剣術、水泳、体操といった分野に精通しており、これらのテーマに関する著書を複数刊行しています。当時の戸山学校長であった大庭二郎が序文を寄せた『剣術用具ノ手入保存法』をはじめ、『新旧剣術教範之研究』、『各種教練と体操』、『遊泳教育』（相良広一との共著）などがあり、その教育者・研究者としての側面を示しています。

会津との繋がりと稚松会設立

会津出身である藁谷は、故郷への思いを生涯持ち続けました。予備役編入後には、旧主家である会津松平家の執事を務めました。また、1912年（明治45年）には、会津出身の陸海軍将校たちが会津松平家を新年祝賀のために訪れた際、その席で会津出身者による親睦組織「稚松会」の設立が発起されました。当時大尉であった藁谷は、別の機関少佐と共に設立案内状の発送を担当するなど、中心的な役割を果たしました。数日後に開かれた設立会議には、松平保男、山田英夫、野口坤之、秋月胤逸、横山勇、下平英太郎、樋口修一郎といった面々と共に参加し、会の設立を決議しました。藁谷は後に稚松会の理事を務め、また賛助員として、故郷の後輩たちの育成や支援に尽力しました。会津松平家分家の松平一郎に嫁いだ松平豊子は、藁谷を「非常に人柄の良い」人物であったと回想しています。

家族

藁谷には子女がいました。長男の武は北海道帝国大学を卒業し、三菱重工業の技術者となりました。彼は高速魚雷艇の技術導入のため、太平洋戦争中の1944年（昭和19年）に行われた第五次遣独潜水艦作戦において、「伊52潜水艦」に便乗してドイツへ向かいましたが、北大西洋で潜水艦が撃沈され、戦死するという悲劇的な最期を遂げました。末子は1939年（昭和14年）時点で陸軍幼年学校に在籍していました。長女は、後に陸軍中将となる塩沢清宣に嫁いでいます。

栄典

軍人としての功績に加え、1902年（明治35年）2月20日には従七位に叙されています。

著作一覧

『新旧剣術教範之研究』 軍事教育会、1907年
『各種教練と体操』 東京兵事雑誌社、1909年
『遊泳教育』 東京兵事雑誌社、1910年（相良広一との共著）
『剣術用具ノ手入保存法』 陸軍戸山学校将校集会所、1912年

参考文献

* 帝国秘密探偵社『大衆人事録 東京篇』（第13版、1939年）

藁谷勇三郎は、軍人として戦役に赴き、教育者として後進の指導にあたり、また会津出身者として故郷との繋がりを大切にしながら社会貢献に努めた人物でした。1966年（昭和41年）7月30日、89歳でその生涯を閉じています。

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