藍謝堂

藍謝堂（らんしゃどう）について

藍謝堂、または藍謝塾は、明治4年（1871年）に実業家・高島嘉右衛門によって現在の神奈川県横浜市に設立された私設学校です。横浜町学校、高島学校とも称されました。

設立の経緯

明治4年7月、高島嘉右衛門は神奈川県庁に対し、年齢や貧富に関わらず誰もが入学できる私設学校の設立を願い出ました。その熱意が認められ、同年11月に開校に至ります。校舎は伊勢山下と入船町に建設され、特に伊勢山下の校舎は洋風木造二階建てという当時としては珍しいものでした。

教育内容

入学案内書『横浜町学校之記』によると、入学金は3両で、横浜市民だけでなく、洋学を志す遠方の人々の入学も許可していました。教授学科は以下の通りです。

第一科：英語学及び数学（外国人教師が担当）
第二科：英書講読
第三科：訳書講読
第四科：手習い

授業料は、第一・第二科兼修が3両、第二・第三科兼修が2両、第三科下等と第四科兼修が2分、第四科のみが1分でした。生活困窮者に対しては授業料の減免も行われました。

教師陣

第一科の外国人教師として、アメリカ人宣教師のJ・H・バラ、後にその弟J・C・バラ、そしてスイス人のカデルリーが就任しました。彼らは英語だけでなく、仏語や独語も教授しました。日本人教師としては、福澤諭吉に監督を依頼しましたが断られ、代わりに慶應義塾の門弟たちが教師として派遣されました。その中には、名児耶六都、岩田蕃、坪井仙次郎、海老名晋、村尾眞一、荘田平五郎、小幡篤次郎、小幡甚三郎、浜尾新、久保田真一、吉村寅太郎、三沢恭哉、小田亨、赤星某などがいました。また、漢学教師として今川當五郎・坂戸小八郎が務めていました。

学校の終焉

明治6年（1873年）1月、高島嘉右衛門は学校設立の功績により賞状と銀盃を授与されました。当時、生徒数は700人を擁していましたが、財政的には毎月2百両の赤字だったとされています。開校からわずか2年後、高島は学校を神奈川県に譲渡、同年11月に修文館と合併し、市中共立修文館と改称されました。その後、伊勢山下の洋風校舎は明治7年（1874年）1月に焼失し、再建されることはありませんでした。

主な出身者

藍謝堂は、多くの優れた人材を輩出しました。主な出身者には、岡倉天心、寺内正毅、小田喜代蔵、得能通昌、本野一郎、宮部金吾、内藤久寛、増田増蔵、渡部鼎などがいます。

まとめ

藍謝堂は、高島嘉右衛門の私財を投じて設立された、当時の最先端の教育機関でした。西洋式の教育を取り入れ、語学だけでなく幅広い知識を教授し、多くの優秀な人材を育てました。短期間でその幕を閉じたものの、日本の近代教育に大きな足跡を残したと言えるでしょう。

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