高島嘉右衛門

高島嘉右衛門：横浜の発展に尽くした実業家、そして易聖

高島嘉右衛門（たかしま かえもん）は、天保3年（1832年）に生まれ、大正3年（1914年）に没した、幕末から明治にかけて活躍した実業家であり、易学者です。横浜の発展に大きく貢献し、「横浜の父」とも呼ばれ、その名は地名にも残っています。

生い立ちと初期の事業

嘉右衛門は、江戸三十間堀（現在の東京都中央区銀座）で、材木商「遠州屋」を営む父・薬師寺嘉兵衛の六男として生まれました。幼少の頃から学問に励み、四書五経などを暗記するほどの記憶力を持っていました。14歳からは家業を手伝い、材木商や普請請負業に従事しました。19歳で父を亡くし、家業を継ぎますが、莫大な借金があることが判明。借金返済に奔走する中で、安政の大地震後の佐賀藩邸の普請で大きな利益を得て、負債を返済します。しかし、盛岡藩邸の普請での失敗により、再び負債を抱えることになります。

入獄と転機

苦境の中、佐賀藩家老の斡旋で横浜に肥前屋を開店し、貿易 business に乗り出します。しかし、金貨の交換比率を利用した取引が禁法に触れ、逮捕、入獄することになります。獄中で易経に触れ、研究を深めたことが、その後の人生を大きく左右します。釈放後、「高島嘉右衛門」と改名し、横浜で再起を図ります。

横浜の発展への貢献

横浜で材木商を再開した嘉右衛門は、アメリカ人技師との出会いをきっかけに、イギリス公使館の建築工事を請け負います。この成功を足掛かりに、多くの外国人から建築依頼を受けるようになります。また、政府高官や外国人を迎えるための大旅館「高島屋」を建設し、社交の場として提供しました。

明治初期には、京浜間の鉄道敷設の必要性を政府に説き、鉄道敷設事業にも尽力します。特に、難工事であった横浜の海面埋め立てを請け負い、これを成功させました。この功績を称えられ、埋め立て地は「高島町」と名付けられました。さらに、語学学校「藍謝堂」を設立し、人材育成にも力を注ぎました。日本初のガス会社である横浜瓦斯会社を設立し、横浜にガス灯を灯すなど、横浜の近代化に大きく貢献しました。

易断家としての高島嘉右衛門

嘉右衛門は、実業家としての一面だけでなく、易断家としても非常に有名でした。幼少の頃から学んでいた易経を獄中でさらに深く研究し、独自の易占法を確立しました。その的中率は非常に高く、多くの人々が嘉右衛門の易断を頼りました。政府高官も政治の重要な決定の際に、嘉右衛門に助言を求めたと言われています。

著書『高島易断』は、その集大成とも言えるもので、漢訳されて中国の知識人にも贈られました。嘉右衛門は易を単なる占いではなく、一種の宗教と捉え、その普及に努めました。

晩年と死

晩年は隠棲し、易の研究に没頭しました。自らの死期を予知し、その通りに亡くなったと伝えられています。墓所は泉岳寺にありましたが、後に移転されました。嘉右衛門の死後も、「高島易断」の名は広く知られ、多くの人々に影響を与え続けています。

高島嘉右衛門は、実業家として横浜の発展に貢献し、易断家として多くの人々に影響を与えた人物でした。彼の生涯は、困難に立ち向かい、常に未来を見据えて行動することの重要性を示しています。

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