藤原実兼 (太皇太后宮亮)

藤原実兼（ふじわら の さねかね）は、平安時代後期の貴族であり、藤原北家閑院流の流れを汲む人物です。父は権大納言を務めた藤原公実。実兼自身も正四位上・刑部卿の官位にまで昇りました。

経歴

実兼は、太皇太后宮亮を歴任した後、天仁元年（1108年）から永久3年（1115年）にかけて少納言を務めました。その後、備後守に任ぜられ、その任期を終えた後に出家したと伝えられています。しかし、同じ一族の兄弟たちが、待賢門院の兄という立場を利用して次々と出世していく中で、実兼は公卿に昇進することができませんでした。

角田文衛氏の説によれば、この背景には、待賢門院に女房として仕えていた実兼の娘が深く関わっているとされています。鳥羽天皇がその娘と密通していた事実を知った白河法皇が激怒し、娘を追放したことが原因ではないか、と指摘されています。この事件が、実兼のその後のキャリアに大きな影響を与えた可能性があると考えられています。

系譜

父：藤原公実
母：藤原永業の娘
妻：藤原知綱の娘

生母が明らかでない子女として、以下の人物がいます。

男子：藤原成兼 - 三条公教の養子となる
男子：藤原季隆
男子：公覚
男子：顕舜
女子：藤原光隆室

藤原実兼は、その出自の高さにも関わらず、政治の中枢で活躍することはできませんでした。しかし、彼自身の経歴や、娘を巡る出来事は、当時の宮廷社会における権力闘争や人間関係の複雑さを物語る上で、重要な要素となっています。

脚注

* 角田文衛『待賢門院璋子の生涯―椒庭秘抄』朝日選書、1985年

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