藤原実方

藤原 実方（ふじわら の さねかた）

藤原実方は平安時代中期に活躍した貴族であり、また歌人としても知られています。彼は左大臣・藤原師尹の孫で、侍従・藤原定時の子として生まれました。官職としては正四位下・左近衛中将を務め、中古三十六歌仙の一員として評価されています。

経歴

実方は幼い頃に父・定時を失い、叔父である大納言・藤原済時の養子として育てられました。彼は左近衛将監を務めた後、天禄4年（973年）に従五位下に叙され、以後も順調に昇進しました。彼は天元5年（982年）に従五位上、永観元年（983年）には正五位下、寛和2年（986年）には従四位下と、次々と位を上げていきました。

正暦4年（993年）には従四位上となり、翌年には左近衛中将に叙任されます。しかし、長徳元年（995年）に陸奥守に左遷されてしまいました。この左遷の背景には、一条天皇の面前で藤原行成との口論があったとされ、実方が行成の冠を投げ捨てたという事件が影響したと考えられています。

実方の左遷時には多くの大官が疫病により亡くなり、その喪が明けた9月には陸奥国に赴任することとなりました。赴任の際には正四位下に叙せられていますが、実方は実際にはほとんどの職務を果たさないまま、長徳4年（999年）に亡くなりました。没年齢はおよそ40歳とされています。

職務と評価

実方が陸奥守として期待されていた業務の一つは、宋との貿易で使用するための砂金を調達し、中央に献上することでした。しかし、彼側にその職務を全うすることなく急死したため、後任者に責任が及ぶこととなりました。これは980年代において特に深刻な問題であり、後任の源満政や橘道貞がその責任を問われることになりました。

実方はまた、官職において文化的な交流を重視し、多くの歌を詠み、詩人としての地位を確立しました。彼は藤原公任や源重之、藤原道信など、有名な歌人たちとも親しい関係を築いていました。また、清少納言とも交友関係が噂され、その風流な才能は多くの人々に尊敬されました。

死後の伝説

実方の死後には、彼の亡霊が賀茂川の橋の下に出没するという噂が広まりました。また、怨念から雀に転生したという伝説もあります。この雀は、殿上の間に置かれた供物を食べるという話が伝えられています。

歌

実方の歌は『拾遺和歌集』や『後拾遺和歌集』などに多く収められ、特に「かくとだに えやはいぶきの さしも草」という歌は有名です。彼の詩には、恋愛や風情に満ちた表現が見られ、多くの人々にとって魅力的な存在であり続けています。

人物と家族

実方は源雅信の娘を母に持ち、藤原済時の養子として名を馳せました。彼には多くの男子と女子がいました。特に、男子の藤原朝元は後に著名な人物となり、彼の家系も影響力を持ちました。

藤原実方は、その歌と生涯を通じて平安時代の文化において重要な役割を果たし、後世の文人たちにも影響を与えました。彼の豊かな人間性と業績は、今なお多くの人々に語り継がれています。

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