藤堂高兌

藤堂高兌（とうどう たかさわ）

藤堂高兌は、伊勢津藩の第10代藩主であり、また久居藩の第12代藩主としても知られています。彼の治世は藩政改革や経済政策の実施によって評価され、領民から広く支持を受けました。

生涯

久居藩主時代

高兌は、天明元年（1781年）4月2日に生まれ、寛政2年（1790年）に養父の藤堂高矗の後を継いで久居藩主となりました。幼い頃は家老の藤堂八座の助けを受けながら、混乱した藩政を安定化させるために改革を志しました。彼は、「義倉積米」制度を導入し、藩士たちから一定の米を貯蓄させ、それを藩の事業や困窮者の支援に活用しました。このように、彼は資金の適切な運用を通じて藩の財政を改善し、混乱した政治体制を立て直しました。

この「義倉積米」制度は、廃藩置県まで続き、最終的には11万6800両も貯められました。高兌はこの制度を公的に運用し、私的な利用を厳禁したことで信頼を得ていました。

津藩主時代

文化3年（1806年）には、父の津藩主高嶷が死去し、高兌は津藩主に就任しました。高兌は、かつての父の厳しい金融政策に対する反発を受けながらも、藩内の支持を獲得しようと努めました。彼は着る物を質素にし、倹約を実践することで藩士の信望を得ると、家計も見事に立て直しました。

藩政改革の一環として、法令の整備や行政機構の改善、さらには藩校の創設を進めました。領民の教育を促進し、有能な人材を育成するための新しい学びの場を設けました。特に国学や武道、西洋学問を取り入れた教育が行われ、藩士の子弟のみならず一般の領民にも広く教育の機会を与えました。

高兌の政治手腕は、教育制度の確立や藩政の安定を実現し、また労働者の生活環境を改善するための治水工事や灌漑用水の整備を行いました。彼の地道な努力は、領民からの感謝を受け、心温まる関係を築いたと伝えられています。実際、彼の施政に感謝した65の村の領民が、年貢に関係なしに藩主へ240俵を献上したエピソードからもその人望の厚さが伺えます。

死去とその後

文政7年（1824年）12月17日に44歳で病死した高兌は、多くの領民から慕われ、彼の回復を祈願して神社仏閣に願がかけられました。彼の死は、津藩にとって大きな損失でありました。高兌の息子、高猷は彼に及ばない政治手腕であったため、津藩の財政は再び悪化の一途をたどることとなりました。

大正6年（1917年）には、大正天皇が高兌に従三位を追贈しました。これは、高兌の業績が後世にまで評価され続けている証とされています。

系譜

高兌は、父に藤堂高嶷、母は側室の今津氏、養父には藤堂高矗を持ちました。また、長男の藤堂高猷と次男の中川久昭を始め、娘も持つなど、その家系は続いています。高兌はその生涯を通じて、名君としての評価を受け、多くの人々に愛された政治家であったことがわかります。

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