藤川為親

藤川為親（ふじかわ ためちか）

藤川為親は、1836年（天保7年）に佐賀藩士の家に生まれ、1885年（明治18年）に49歳で病没した、幕末から明治にかけて活躍した人物です。佐賀藩士として幕末の動乱期を過ごし、明治維新後は内務官僚として地方行政に携わりました。通称は敬六。

生い立ちと藩士時代

佐賀藩士・藤川広次の次男として生まれた為親は、幼くして父親を亡くすという不遇な少年時代を送りました。その後、藩の学校会計吏や監察兼軍艦会計吏などの役職を歴任し、藩政を支えました。戊辰戦争では、東上する藩兵の隊長として従軍し、その武勇を称えられました。

明治維新後の活躍

明治維新後、為親は新政府に出仕し、地方行政官としてのキャリアをスタートさせます。

1868年（慶応4年）8月には下野国真岡判県事に任命され、その後、日光県大参事、新川県権参事、栃木県参事、兼宇都宮県参事と、各地の要職を歴任しました。1877年（明治10年）1月には、栃木県大書記官に就任し、県政の中枢を担いました。

栃木県令時代

1880年（明治13年）10月、為親は前任の鍋島幹の推薦により、栃木県令に就任します。当時、自由民権運動が全国的に高まりを見せる中、為親は先駆けて戸長公選を廃止するという大胆な政策を実行しました。この政策は、当時の政治情勢に大きな影響を与えました。

しかし、県会との対立が生じた際も、為親は強引な原案執行を避け、平和的な解決を模索しました。この姿勢から、彼は「平和主義の男」と呼ばれるようになりました。

また、為親の県令時代には、足尾銅山の鉱毒被害が表面化しました。彼は直ちに調査を行い、「渡良瀬川の魚族は衛生に害あるにより一切捕獲することを禁ず」という達しを出し、被害の拡大を食い止めようとしました。

島根県令時代

1883年（明治16年）10月、為親は島根県令に転任しました。島根県では、道路改修事業の推進に尽力し、県内のインフラ整備に貢献しました。しかし、在任中に病に倒れ、その生涯を終えることになりました。

人物像と評価

藤川為親は、幕末の動乱期から明治維新という激動の時代を生き抜いた人物です。藩士として、また官僚として、常に責任感を持って職務を遂行しました。特に、県令としては、自由民権運動の高まりという難しい時代において、バランス感覚をもって県政を運営しました。その平和主義的な姿勢と、困難に立ち向かう勇気は、後世に語り継がれるべきでしょう。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
『栃木県歴史人物事典』下野新聞社、1995年。
干河岸貫一編『明治百傑伝』青木嵩山堂、1902年。
* 大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）。

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