藤田勇 (法学者)

藤田勇（ふじた いさむ）

日本の法学者であり、東京大学社会科学研究所の名誉教授である藤田勇は、1925年10月31日に朝鮮羅南で生まれました。ソ連法学を専門とし、社会主義法やマルクス主義法理論に関する研究で知られています。

経歴

藤田勇は、太平洋戦争中に兵役を経験し、戦後はシベリアに抑留されるという過酷な体験をしました。1952年に東京大学法学部を卒業後、同大学の社会科学研究所助手として研究者の道を歩み始めました。1958年には助教授に昇進し、1962年には学位論文『社会主義的所有と契約』を提出して法学博士号を取得しました。1969年には同研究所の教授に就任し、1980年から1982年の間には所長を務めました。

1985年に東京大学を定年退官し、名誉教授となった後も、神奈川大学法学部教授として教鞭をとり、後進の育成に尽力しました。2000年に同大学を退職するまで、精力的に研究と教育活動を続けました。

研究内容

藤田勇の研究は、ソ連法学を中心に、社会主義法やマルクス主義法理論を深く掘り下げたものが多く、特に社会主義社会における所有や契約、国家と民主主義、法と経済の関係について詳細な分析を行いました。また、マルクス主義法学の方法論についても重要な貢献をしています。

著書や共編著を通じて、その研究成果は広く社会に影響を与え、法学分野における重要な文献として、今もなお参照され続けています。

主な著書

『社会主義的所有と契約 全人民的所有の運動形態としての計画契約の法的構造』 (1957年、東京大学出版会)
『ソビエト法理論史研究 1917-1938 ロシア革命とマルクス主義法学方法論』 (1968年、岩波書店)
『法と経済の一般理論』 (1974年、日本評論社)
『社会主義における国家と民主主義』 (1975年、大月書店)
『社会主義社会論』 (1980年、東京大学出版会)
『ソビエト法史研究』 (1982年、東京大学出版会)
『概説ソビエト法』 (1986年、東京大学出版会)
『近代の所有観と現代の所有問題』 (1989年、日本評論社)
『自由・平等と社会主義 1840年代ヨーロッパ～1917年ロシア革命』 (1999年、青木書店)
『自由・民主主義と社会主義 1917-1991 社会主義史の第2段階とその第3段階への移行』 (2007年、桜井書店)
『マルクス主義法理論の方法的基礎』 (2010年、日本評論社)

共編著

『日本の法社会学 文献研究 法社会学論争』 (1969年、日本評論社)
『資本主義法の形成と展開』全3巻 (1972-1973年、東京大学出版会)
『文献研究マルクス主義法学 戦前』 (1972年、日本評論社)
『社会主義と自由権 ソ連における自由権法制の研究』 (1984年、法律文化社)
『現代社会の家族と法』 (1986年、日本評論社)
『権威的秩序と国家』 (1987年、東京大学出版会)
『科学技術の発達と法 第4回日ソ法学シンポジウムの記録』(1989年、日本評論社)
『体制転換期ロシアの法改革』 (1998年、法律文化社)

翻訳

M.B.コルガーノフ 『社会主義社会における所有』上 (1960年、有斐閣)
* ソ連邦科学アカデミー国家・法研究所編『マルクス=レーニン主義国家・法の一般理論 基本的制度・概念』下 (1973年、日本評論社)

影響

藤田勇の著作は、法学研究者だけでなく、社会科学に関心のある多くの人々に読まれ、社会主義法やマルクス主義法理論の理解を深める上で重要な役割を果たしました。また、彼の研究は、現代社会における法の役割や民主主義のあり方を考える上で、貴重な視点を提供し続けています。

藤田勇の研究は、ソ連法学、社会主義法、マルクス主義法理論の分野において、学術的に重要な貢献をしただけでなく、その後の法学研究にも大きな影響を与えました。彼の学問に対する真摯な姿勢と深い洞察は、後進の研究者たちの模範となっています。

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