藤田貞一郎

藤田貞一郎：日本経済史研究の Pioneer

藤田貞一郎（1935年2月11日 - 2015年6月13日）は、日本経済史の研究において顕著な業績を残した学者であり、同志社大学名誉教授を務めました。彼は、朝鮮の平壌府出身であり、その学術的な探求は、近世経済思想、市場史、そして同業組合史といった多岐にわたる分野に及びました。

学歴と師事

1963年、藤田貞一郎は大阪大学大学院経済学研究科を修了し、「近世経済思想の研究 幕藩体制と「国益」思想」というテーマで経済学博士号を取得しました。彼の研究は、単なる学術的な探求に留まらず、日本経済史における重要な問題を掘り下げ、新たな視点を提供しました。また、彼は宮本又次に師事し、その指導の下で研究者としての基礎を築きました。

職歴

藤田貞一郎は、松山商科大学講師、同志社大学商学部助教授、教授を歴任し、2005年に定年退職後、名誉教授となりました。同志社大学における長年の教育活動を通じて、多くの学生を育成し、日本経済史研究の発展に貢献しました。

研究内容

藤田貞一郎の研究は、近世経済思想における「国益」概念の分析、近代生鮮食料品市場の史的研究、そして近代日本同業組合史の研究など、多岐にわたります。彼の研究は、歴史的な視点から市場経済の構造や機能を解明し、現代社会における経済問題の理解に貢献しています。また、彼は「領政改革」概念を提唱し、訓詁学の再考を促すなど、学問に対する深い洞察力を持っていました。

著書

藤田貞一郎は、数多くの著書を執筆しました。

『近世経済思想の研究 「国益」思想と幕藩体制』(吉川弘文館, 1966)
『京都市公設小売市場の50年 公設小売市場と日本資本主義』(京都市経済局消費経済課編, 京都市公設小売市場連合会, 1969)
『近代生鮮食料品市場の史的研究 中央卸売市場をめぐって』(清文堂出版, 1972)
『近代日本同業組合史論』(清文堂出版, 1995)
『国益思想の系譜と展開 徳川期から明治期への歩み』(清文堂出版, 1998)
『近代日本経済史研究の新視角 国益思想・市場・同業組合・ロビンソン漂流記』(清文堂出版, 2003)
『「領政改革」概念の提唱 訓詁学再考』(清文堂出版, 2011)

これらの著書は、彼の研究成果を広く社会に伝えるとともに、日本経済史研究における重要な文献として、今日でも多くの研究者に参照されています。

共編著

『日本商業史』(宮本又郎、長谷川彰共著, 有斐閣新書, 1978)
『宮本又次史学館』(宇田正共編, 思文閣出版, 1984)
『市場と経営の歴史 近世から近代への歩み』(安藤精一共編, 清文堂出版, 1996)

これらの共編著は、他の研究者との共同研究を通じて、より多様な視点から日本経済史を考察する試みであり、学術的な交流の重要性を示しています。

藤田貞一郎の業績は、日本経済史研究における重要な礎となっており、彼の学術的な貢献は、後世の研究者によって受け継がれ、発展していくことでしょう。

もう一度検索