藤葉栄衰記

『藤葉栄衰記』（とうようえいすいき）は、現在の福島県を舞台とした軍記物語です。成立年代や著者などの詳細は不明ですが、寛永2年（1625年）8月の奥書を持つ写本が現存しています。

物語の中心は、奥州須賀川城を拠点とした戦国大名、二階堂氏の盛衰の歴史です。「藤葉」という書名は、二階堂氏が藤原氏の流れを汲むことに由来すると考えられています。物語では、室町時代の二階堂為氏による須賀川城奪還と、戦国時代末期の伊達政宗による須賀川城攻略という二つの出来事が特に重要なエピソードとして描かれています。そして、豊臣秀吉による天下統一が成し遂げられるところで、物語は筆を置きます。

この作品は、明治時代に『史籍集覧』によって二度活字化され、その後、『続群書類従』にも句読点が加えられて活字化されました。これにより、広く読まれる機会が増えることとなりました。

また、この物語には「二階堂栄衰記」、「二階堂実録」、「須賀川落城記」といった異名を持つ写本も存在します。これらの写本は、物語の基本的な構成は共通していますが、書き写された人物の意図によって、加筆や修正が加えられていると考えられています。詳細な地名や人名などが記録されている点も特徴であり、歴史的な資料としての側面も持ち合わせています。同時代の軍記物と比較しても、文章表現に優れている点が評価されています。

参考文献

* 須賀川市教育委員会 『須賀川市史 中世 －二階堂領時代－』須賀川市教育委員会、1973年

もう一度検索