藤野保

藤野保

藤野保（ふじの たもつ、1927年9月5日 - 2018年5月14日）は、日本の著名な日本史学者であり、特に近世日本史、特に幕藩体制史の研究において多大な貢献をしました。

経歴

1927年、長崎県に生まれました。東京文理科大学（後の筑波大学）史学科で日本史を専門的に学び、1951年に卒業。その後、東京教育大学大学院に進学し、更なる研究に励みました。1959年に博士課程を満期退学しています。

1962年には、学位論文『幕藩体制史の研究』を東京文理科大学に提出し、文学博士号を取得。この論文は、幕藩体制の研究における重要な業績として高く評価され、同時に東京文理科大学賞を受賞しました。研究者としての初期の段階で、その才能を広く認められたことになります。

1965年、九州大学文学部附属九州文化史研究施設助教授として教職に就き、研究・教育活動を開始。1972年には教授に昇格し、後進の育成にも尽力しました。1975年から1983年まで九州文化研究施設長を務め、研究組織の運営にも手腕を発揮しました。

1986年、中央大学文学部教授に転任。1998年に退職するまで、長年にわたり教鞭を執りました。2018年5月14日、多臓器不全のため90歳で逝去されました。

業績

藤野保は、幕藩体制史研究の第一人者として、数多くの著作を発表しました。

『幕藩体制史の研究 権力構造の確立と展開』(1961年) : 博士論文を元にした著書で、幕藩体制の成立と展開を詳細に分析し、その後の研究に大きな影響を与えました。
『徳川政権論』(1991年) : 徳川政権の構造と特質を多角的に考察した研究書です。
『近世国家史の研究 幕藩制と領国体制』(2002年) : 近世国家の成立過程と幕藩体制、領国体制の関係性を深く掘り下げた研究書です。
『江戸幕府崩壊論』(2008年) : 江戸幕府が崩壊に至る過程を分析し、その要因を解明しようとした意欲的な研究書です。

これらの著作以外にも、『大名 その領国経営』(1964年)、『日本封建制と幕藩体制』(1983年)など、多数の著書を執筆し、日本近世史研究の発展に大きく貢献しました。また、共編著や校訂も多数手がけ、幅広い分野で研究活動を展開しました。

評価

藤野保の研究は、実証的な研究に基づきながらも、常に新しい視点を取り入れ、日本近世史研究に新たな地平を切り開いたものとして高く評価されています。特に、幕藩体制の成立と展開、徳川政権の構造、近世国家の形成過程などに関する研究は、その後の研究に大きな影響を与えました。また、研究者育成にも熱心であり、多くの優れた研究者を輩出しました。

著作一覧

著書

『幕藩体制史の研究 権力構造の確立と展開』吉川弘文館、1961
『大名 その領国経営』人物往来社、1964
『徳川幕閣 武功派と官僚派の抗争』中公新書、1965
『大名と領国経営』新人物往来社、1978
『幕政と藩政』吉川弘文館、1979
『日本封建制と幕藩体制』塙書房、1983
『一歴史家のあゆみ 六十年を回顧して』私家版、1988
『徳川政権論』吉川弘文館、1991
『日本近世史論考 地域・比較・文献研究』朝倉書店、1995
『江戸時代をどう視るか 幕府・藩・天領』雄山閣出版、1997
『近世国家史の研究 幕藩制と領国体制』吉川弘文館、2002
『近世国家解体過程の研究 幕藩制と明治維新』吉川弘文館、2006
『江戸幕府崩壊論』塙選書、2008
『幕藩制国家と明治維新』清文堂出版、2009
『佐賀藩』吉川弘文館 日本歴史叢書、2010
『徳川幕閣 武功派と官僚派の抗争』（読みなおす日本史）吉川弘文館、2024

共編

『佐賀藩の総合研究 藩制の成立と構造』編 吉川弘文館、1981
『大村郷村記』全6巻 編 国書刊行会、1982
『九州近世史研究叢書』全10巻　編 国書刊行会、1984 - 1985
『九州と日本社会の形成 縄文から現代まで』横山浩一共編 吉川弘文館、1987
『続佐賀藩の総合研究 藩政改革と明治維新』編 吉川弘文館、1987
『徳川幕閣のすべて』編 新人物往来社、1987
『徳川家康事典』村上直・所理喜夫・新行紀一・小和田哲男共編 新人物往来社、1990
『論集幕藩体制史』第1期 全11巻 編 雄山閣出版、1993 - 96
『大村見聞集』清水紘一共編 高科書店、1994
『徳川政権と幕閣』編 新人物往来社、1995
『近世国家の成立・展開と近代』編 雄山閣出版、1998
『日本史事典』編者代表、岩崎卓也・阿部猛・峰岸純夫・鳥海靖編集委員 朝倉書店、2001

校訂

『恩栄録・廃絶録』小田彰信編、校訂 近藤出版社(日本資料選書)、1970
『徳川加除封録』清田黙著、校訂 近藤出版社(日本史料選書)、1972

記念論集

『近世日本の社会と流通』藤野保先生還暦記念会編著 雄山閣出版、1993
『近世日本の政治と外交』藤野保先生還暦記念会編著 雄山閣出版、1993


藤野保は、その生涯を日本史研究に捧げ、数多くの優れた業績を残しました。その研究は、今後も日本史研究に大きな影響を与え続けるでしょう。

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