藻原荘

藻原荘について

藻原荘（もばらのしょう）は、奈良時代に成立した日本の初期荘園の一つであり、上総国埴生郡（かずさのくにはぶぐん）、現在の千葉県茂原市を中心とする一宮川流域に存在したと推定されています。

成立の経緯

藻原荘の成立には、藤原黒麻呂という人物が深く関わっています。宝亀5年（774年）に上総介（かずさのすけ）に任ぜられ、現地に赴任した黒麻呂は、入手した牧を開墾し、藻原荘の基礎を築きました。黒麻呂の子である春継は、常陸大目（ひたちだいさかん）坂上盛（さかのうえのさかり）の娘を妻とし、藻原荘に住み、その生涯を終えました。

春継は、自身の死後、藻原荘を墓所として保全するために、興福寺に施入することを遺言しました。しかし、春継の子である良尚は、この遺言を果たすことなく、貞観19年（877年）に急死してしまいます。そのため、寛平2年（890年）に、良尚の子である菅根（すがね）らが、田代荘（たしろのしょう）とともに興福寺に施入しました。この施入によって、藻原荘は興福寺の所領となりました。

位置と変遷

藻原荘は、一宮川中流の藻原寺付近にあったとされています。荘園が存在した奈良・平安時代には、埴生郡の郡域内に位置していました。しかし、その後、郡域には変更があり、江戸時代には古代の埴生郡の太平洋側が長柄郡（ながらぐん）に併合されました。そのため、長生郡（ちょうせいぐん）が発足する以前の長柄郡にあたる場所が、かつての藻原荘があった地域と考えられています。

史料

藻原荘に関する記録は、『朝野群載（ちょうやぐんさい）』に所収されている、寛平2年8月5日付の藤原菅根等連署施入帳に見ることができます。この記録から、藻原荘が興福寺領であったことがわかります。

まとめ

藻原荘は、奈良時代に成立し、平安時代にかけて発展した初期荘園であり、その成立には藤原黒麻呂という人物が深く関わっていました。一族による開墾と、興福寺への施入によって、その歴史が刻まれました。現在の千葉県茂原市周辺に位置し、当時の社会構造や土地制度を理解する上で重要な史料となっています。


参考文献

網野善彦 他 『東北・関東・東海地方の荘園 (講座 日本荘園史)』 吉川弘文館、1990年、ISBN 4-642-02695-9
角川日本地名大辞典編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 12 千葉県』 角川書店、1984年、ISBN 4-04-001120-1

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