藤原菅根

藤原菅根（ふじわら の すがね）

藤原菅根は、平安時代前期の貴族であり、学者としても名を馳せました。斉衡3年（856年）に生まれ、延喜8年（908年）に53歳で亡くなりました。藤原南家出身で、右兵衛督・藤原良尚の四男です。最終的な官位は従四位上・参議、贈従三位。

生涯

若年期と学問

元慶8年（884年）に文章生となり、官僚としてのキャリアをスタートさせました。因幡権大掾を経て、寛平2年（890年）に対策に合格。翌年には少内記に任ぜられ、着実に昇進していきました。学問にも熱心で、経書や史書、多くの学者の著書に通じていたと伝えられています。

醍醐天皇の側近として

寛平5年（893年）には、敦仁親王（後の醍醐天皇）の立太子に伴い、春宮侍読に抜擢されました。菅原道真の推挙により、親王に『曲礼』『論語』『後漢書』などを講義しました。寛平9年（897年）に敦仁親王が即位すると、従五位下に叙爵され、昇殿を許されます。その後も、勘解由次官、式部少輔などを歴任し、道真の推薦で従五位上に昇進するなど、天皇の側近として重用されました。

昌泰の変と失脚

昌泰2年（899年）には文章博士となり、天皇の前で『史記』を進講するなど、学者としての才能も発揮しました。しかし、昌泰4年（901年）に発生した昌泰の変では、醍醐天皇の外戚である藤原定国とともに、「天下の世務は理に非ず」と奏上し、菅原道真失脚のきっかけを作りました。さらに、道真の左遷を諫止しようとした宇多上皇を、内裏の門前で阻んだとされています。この行動は、かつて道真に受けた屈辱を晴らそうとしたものという説もありますが、左大臣・藤原時平や醍醐天皇の命令に従った職務遂行であったとする見方もあります。上皇の参内を阻止した責任を問われ、一時的に蔵人頭を解任され、太宰大弐に左遷されましたが、すぐに蔵人頭に復帰しています。

その後と急逝

昌泰の変後、菅根は急速に昇進を重ねました。延喜2年（902年）に正五位下、延喜3年（903年）に従四位下・式部権大輔、延喜6年（906年）に従四位上へと昇進。延喜4年（904年）には、保明親王が皇太子に立てられるとその春宮亮を兼任、延喜式編纂にも参加しました。延喜8年（908年）正月には参議に任じられ公卿に列しますが、同年10月7日、雷に打たれて急逝しました。死後、従三位が贈られています。

人物像

学問に熱心で、幅広い知識を持つ人物であったと伝えられています。また、勅撰歌人として、『古今[[和歌集]]』に一首が収録されています。

系譜と子孫

父は藤原良尚、母は菅野高年の娘です。妻は藤原氏江の娘で、子には藤原元方、藤原淑姫などがいます。息子・元方は文章生から大納言にまで昇進し、その子孫も公卿を輩出するなど、一族の繁栄に貢献しました。また、菅根の曾孫には、盗賊として有名な保輔がいます。

官歴

元慶8年（884年）6月21日：文章生
寛平2年（890年）正月：因幡掾
寛平3年（891年）3月9日：少内記
寛平9年（897年）7月13日：従五位下、7月17日：勘解由次官、7月26日：式部少輔、11月23日：従五位上
昌泰2年（899年）2月11日：兼文章博士
昌泰3年（900年）正月：兼備中権介、正月29日：蔵人頭、5月15日：右近衛少将、式部少輔備中権介如元
昌泰4年（901年）正月26日：太宰大弐、止蔵人頭、2月19日：式部少輔、2月21日：如元蔵人頭、3月15日：兼権左中弁
延喜2年（902年）正月7日：正五位下
延喜3年（903年）正月7日：従四位下、2月26日：式部権大輔
延喜4年（904年）正月25日：兼備前守、2月：兼春宮亮、2月26日：式部大輔、兼官如元
延喜6年（906年）11月7日：従四位上
延喜7年（907年）2月29日：兼侍従
延喜8年（908年）正月12日：参議、侍従式部大輔如元、10月7日：卒去、10月17日：贈従三位

参考文献

『公卿補任 第一篇』吉川弘文館、1982年
『尊卑分脈 第二篇』吉川弘文館、1987年
『角川日本地名大辞典 12 千葉県』 角川書店、1984年

藤原菅根は、学問に秀で、官僚としても重要な役割を果たしましたが、昌泰の変での行動は後世に様々な議論を呼びました。彼の生涯は、平安時代前期の貴族社会や政治情勢を理解する上で重要な資料となります。

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