蘋果日報 (香港)

蘋果日報の概要

蘋果日報（Apple Daily）は、1995年に香港で創刊された日刊新聞であり、広東語と繁体字中国語で発行されています。日本では「リンゴ日報」とも訳されるこの新聞は、特に大きなカラー写真と目を引く見出しが特徴の大衆紙です。執筆のスタンスとして自由主義を標榜し、親民主派の立場を取ることから、反北京の姿勢を貫いています。創業者は黎智英（ジミー・ライ）で、彼が設立した壱伝媒（Next Digital Limited）が発行を行っています。

特徴と発行部数

蘋果日報は、1部あたり10香港ドルで販売されており、発行部数は約10万部です。また、オンライン版の購読者は約61万人に達し、香港の新聞で最も多いネット版の購読者数を誇っていました。特に1998年と2011年にはそれぞれ平均約40万部、約29万部の発行を記録しています。

躍進の背景

黎智英は、広東省出身です。彼は小学校卒業後に香港に移住し、その後大手アパレルブランドジョルダーノを築くなど成功を収めました。しかし、1989年の天安門事件が彼に強い影響を与え、報道の自由と民主主義を守るメディアの必要性を認識します。そうした想いから1990年に壱伝媒を設立し、1995年には蘋果日報を創刊しました。

当初、全ページがカラー印刷の新聞は香港には存在しなかったため、蘋果日報はその特異性で瞬く間に読者を惹きつけました。写真とビジュアルデザインを重視し、娯楽的な側面を強調した内容が受け入れられました。そのため、他の新聞が対応できないほどの競争に直面し、多くの報道機関が廃刊に追い込まれました。

メディアとしての特性

蘋果日報は、芸能人の活動やスキャンダル、流行など、読者が関心を持つ内容を多く取り入れており、特にその扇情的な報道スタイルが注目されました。しかし、内容の信頼性が低いとの評価もあり、一般的に信頼されているとは言えなかった時期もありました。

中でも、「蘋果化」と呼ばれる現象は、新聞が読者の好みに合わせて内容を変化させ、タブロイド化していく様子を示しています。これにより、報道のスタイルが大きく変わることになりました。

政治的立場

蘋果日報は、香港政府や中国共産党政府に対する批判を行い、親民主的な立場を貫いています。この姿勢がために、中国本土では発行が禁止され、ウェブサイトのアクセスが制限されています。政治批判に力を入れる一方、金融政策や市場重視の観点からの報道も行っています。

香港民主化運動への関与

反政府の立場から、香港の民主化運動に関与してきた蘋果日報は、かつてのデモを支持する姿勢を明確に示しており、様々な攻撃や妨害行為に直面してきました。特に2014年や2019年のデモ期間中には、オーナーの黎智英の自宅に火炎瓶が投げ込まれる事件が発生するなど、リスクを背負って報道を続けました。

廃刊とそれに対する反応

2021年6月24日、蘋果日報は発行を停止しました。この事態を受けて、アメリカのジョー・バイデン大統領や台湾の蔡英文総統などが声明を出し、香港の言論の自由の抑圧を非難しました。また、国際社会からはこの廃刊が政治的な圧力によるものとされ、民主主義に対する重大な後退であるとの指摘がなされました。

このように、蘋果日報の発行停止は香港だけでなく、国際的なメディアの自由と民主主義に対する重要な注意喚起となっていることを示しています。

もう一度検索