蘭汗

蘭汗（らん かん）：後燕を簒奪した短命な君主

蘭汗は、五胡十六国時代の後燕において、皇帝の位を簒奪した人物です。しかし、その支配はわずか数ヶ月で終わり、後燕の歴史において特異な存在として知られています。

生涯

即位前

蘭汗は、後燕の創始者である慕容垂が前秦から独立する際に、その部将として活躍しました。384年には慕容垂の子である慕容農の決起を助け、後燕の建国に貢献しました。その後も、東晋との戦いや鮮卑賀蘭部との戦いなどで功績を挙げ、慕容垂から信任を得ました。慕容垂の治世下で、蘭汗は慕容盛の娘を娶り、慕容氏との関係を深めました。

395年、太子の慕容宝が参合陂の戦いで大敗を喫した後、蘭汗は陽城王に封じられ、北中郎将に任じられました。これにより、蘭汗は軍事的な要職を担うこととなり、後燕における地位をさらに高めました。

簒奪と短い支配

398年春、部将の段速骨が後燕に反乱を起こし、皇帝の慕容宝を龍城で包囲しました。この混乱に乗じて、当時の尚書・頓丘王であった蘭汗は段速骨と密かに通じました。慕容農が段速骨に降伏したことで龍城は陥落し、慕容宝は都を脱出しました。

蘭汗は、段速骨を殺害し、慕容宝の太子であった慕容策を擁立することで、慕容宝を呼び戻そうとしました。しかし、慕容宝は慕容盛の助言に従い、南燕を建国した慕容徳のもとへ逃れようとしました。しかし、蘭汗の弟である蘭加難に迎えられた際に殺害されました。

慕容宝を殺害した蘭汗は、慕容策や慕容氏の皇族を多く殺害し、大単于と昌黎王を自称して皇帝に即位しました。また、元号を青龍と改めました。

簒奪後の失脚

慕容宝の死を聞いた慕容盛は、蘭汗に同情心を利用して龍城に戻りました。蘭汗は慕容盛を侍中・左光禄大夫に任じましたが、慕容盛は密かに兵を集め、蘭汗打倒の機会を窺っていました。また、蘭汗は慕容盛の進言を受け入れて燕の諸廟に詣で、慕容宝を殺害した罪を蘭加難に負わせたため、蘭堤と蘭加難の不満を買いました。

同年7月、蘭穆が蘭堤や蘭加難の反乱を鎮圧した宴の席で、酔いつぶれた蘭穆は慕容盛の兵によって殺害されました。これに乗じて、慕容盛は蘭汗とその一族を皆殺しにし、皇帝の位を簒奪しました。蘭汗の支配は、わずか数ヶ月で終わりを迎えました。

皇族ではない簒奪者であるため、蘭汗の在位中、後燕は一度滅亡したとして歴代君主に数えられない場合もあります。

宗室

正室：乙氏
男子：
蘭穆（太子）
蘭和（魯公）
蘭揚（陳公）
女子：蘭氏（慕容盛の妻）

蘭汗は短期間の支配でしたが、五胡十六国時代の混乱期を象徴する人物の一人として、歴史に名を残しています。

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