虹を掴む男 (映画)

『虹を掴む男』（原題：The Secret Life of Walter Mitty）は、1947年に公開されたアメリカ合衆国のファンタジー・コメディ映画です。監督はノーマン・Z・マクロード、主演はダニー・ケイとヴァージニア・メイヨが務めました。原作はジェームズ・サーバーの短編小説『ウォルター・ミティの秘密の生活』ですが、映画は原作を大幅に脚色し、オリジナルストーリーを展開しています。

物語の中心人物は、ニュージャージー州パースアンボイ出身のウォルター・ミティです。彼は出版社の編集者として働く平凡な男性ですが、現実の生活では、過干渉な母親、横暴な上司、そして少々おかしな婚約者など、周囲の人間関係に悩まされています。日々のストレスから逃れるため、ウォルターは現実離れした白昼夢に浸る日々を送っていました。

彼の白昼夢は、読んでいるパルプ雑誌の影響を受けた、刺激的で冒険的なものです。例えば、ボイラーに火を入れながらイギリス空軍の戦闘機パイロットになったり、想像を絶する冒険を繰り広げたりします。しかし、これらの白昼夢は、現実世界でのトラブルを招くこともしばしば。ある日、白昼夢の中で戦闘機パイロットとして敬礼した際に、火かき棒でスーツに穴を開けてしまうというハプニングも起きました。

そんなウォルターの前に、謎めいた女性ロザリンド・ヴァン・ホーンが現れます。彼女は第二次世界大戦中にナチスから隠されたオランダ王室の宝石を探しており、その過程でウォルターは、現実離れした冒険に巻き込まれていきます。平凡な日常とはかけ離れた出来事の連続に、ウォルターは戸惑いながらも、徐々に現実の世界に立ち向かう勇気を見出していくのです。

映画には、個性豊かなキャラクターが多数登場します。ウォルターの上司であるブルース・ピアースは、彼の能力を認めないばかりか、その成果を横取りしようとする傲慢な人物です。一方、ウォルターの婚約者ガートルード・グリスウォルドとその友人タビー・ワズワース、そして口うるさい母親グリスウォルド夫人といった面々も、ウォルターの日常生活に様々な困難をもたらします。さらに、ウォルターを殺そうとする不気味な男ホリングスヘッド博士も重要な役割を果たしています。

ダニー・ケイ演じるウォルター・ミティは、コミカルでありながらどこか哀愁漂う魅力的なキャラクターです。彼の現実逃避と、現実世界での奮闘は、多くの観客の共感を呼びました。ヴァージニア・メイヨ演じるロザリンドは、ウォルターの白昼夢と現実世界を繋ぐ重要な存在であり、彼女との出会いがウォルターの人生に大きな変化をもたらします。

『虹を掴む男』は、原作の短い短編小説を基に、独自のストーリー展開と個性的なキャラクター、そして軽妙なユーモアを織り交ぜた作品です。1947年当時の観客を魅了しただけでなく、2013年にはベン・スティラー監督・主演で『LIFE!』としてリメイクされるなど、時代を超えて愛される作品となっています。Rotten Tomatoesでの評価も高く、批評家からも高い評価を得ている点が、この映画の完成度の高さを物語っています。 映画史に残る名作として、現在でも多くのファンに愛されています。

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