蚕影神社

蚕影神社（こかげじんじゃ）

茨城県つくば市神郡に鎮座する蚕影神社は、養蚕の神様を祀る全国の蚕影神社の総本社です。正式名称は舊字体の蠶影神社で、通称は蚕影山神社として親しまれています。古くは「蚕影山桑林寺」や「蚕影明神」と呼ばれていました。

概要

筑波山地の不動峠から多気山にかけての山腹に位置し、長い石段の参道が特徴的です。かつては養蚕が盛んだった明治・大正時代には多くの参拝客で賑わいましたが、現在は静かな佇まいを見せています。しかし、その歴史と信仰は今もなお受け継がれています。

神社の鎮座する山は、子飼山、蚕飼山、神郡山などと呼ばれてきました。「蚕影山」は寺院時代の山号に由来します。

祭神

主祭神は以下の三柱です。

和久産巣日神（わくむすびのかみ）
埴山姫命（はにやまひめのみこと）
木花開耶媛命（このはなさくやひめのみこと）

その他、明治時代の神社整理によって、以下の神社の祭神も合祀されています。

大夫神社：大己貴命（おおなむちのみこと）
六所神社：筑波男神（伊弉諾尊）、筑波女神（伊弉册尊）、天照大御神、月読命、素盞嗚尊、蛭兒命、生馬命
稲荷神社：倉稲魂命（うかのみたまのみこと）
天満神社：菅原道真公
浅間社：木花咲耶姫命
山ノ神社：猿田彦命（さるたひこのみこと）
國神神社：国常立命（くにとこたちのみこと）

祭礼

例祭日は10月23日。2023年以降は日曜日に斎行されています。

神社整理と六所神社

蚕影神社は、明治時代の神社整理によって周辺の神社を合併しました。特に、六所神社は筑波山神社の里宮としての役割も担っていた由緒ある神社でしたが、1908年に廃絶となり、蚕影神社に合祀されました。六所神社の旧址には現在、新宗教団体が関連施設を設けています。

その他の沿革

貞享年間（1684年 - 1688年）：本殿（三間社流造）造立
1882年（明治15年）4月：村社に列格
2009年（平成21年）6月6日：映画『ガマの油』のロケ地となる

由緒

創建年代には諸説あり、正伝では成務天皇の御代（131-190年）に筑波国造の阿閉色命によって創祀されたと伝えられています。また、金色姫伝説にまつわる創祀説や、筑波国造権太夫良平による創祀説などもあります。

蚕影神社は、筑波山神社とも深い関わりを持ち、養蚕、製糸、機織の技術伝来の地として、養蚕の神を祀ってきました。

蚕影山信仰

茨城県一帯はかつて養蚕業が盛んであり、蚕影神社は養蚕信仰の中心地として栄えました。神社に伝わる金色姫伝説は、養蚕の起源を説く物語として広く知られています。蚕影神社の分社は、県内だけでなく、東京都、群馬県、長野県、福島県、岩手県にも存在します。

しかし、養蚕業の衰退とともに、蚕影山信仰も衰退し、現在は地域の鎮守としての役割を担っています。

金色姫伝説

金色姫伝説は、天竺を舞台とした壮大な物語です。北天竺の金色皇后が、継母の陰謀によって幾度も命を狙われながらも生き延び、最終的に桑の靭船に乗って常陸国の豊浦湊に漂着します。そこで養蚕と機織の技術を広め、日本の養蚕の祖となったと伝えられています。この伝説は、蚕影山信仰の根幹をなしています。

脚注

国立国会図書館デジタルコレクション
吉田東伍「大日本地名辞書 下巻 二版」
柳沢鶴吉編「常山総水:名勝古蹟」
筑波教育会編「筑波郡案内記」
いはらき新聞「茨城県神社写真帳」
屋根のない博物館ホームページ
Silk New Wave
かすみがうらネット
つくば市立田井小学校
茨城の民話Webアーカイブ

関連項目

* 蚕養国神社（福島県会津若松市）

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