筑波国造

筑波国造（つくばのくにのみやつこ/つくばこくぞう）

筑波国造は、古代に常陸国南部を支配したとされる国造です。現在の茨城県土浦市の一部、つくば市、つくばみらい市の大部分に相当する地域を治めていました。

概要

筑波国造は、常陸国（ひたちのくに）の南部に勢力を持っていた古代の地方豪族です。その歴史は、日本の古代史を理解する上で重要な要素となっています。彼らの支配領域や文化、信仰は、当時の社会構造や地域間の繋がりを解き明かす鍵となります。

祖先

『国造本紀』によれば、筑波国造の初代は成務天皇の時代に任命された忍凝見命（おしごりみのみこと）の孫である阿閇色命（あべのしこのみこと）とされています。しかし、『常陸国風土記』には、それ以前の崇神天皇の時代に筑箪命（つくたなのみこと）という人物が、この地の名を「紀の国」から「筑波国」に改めたと記されています。この筑箪命は采女氏と同族とされています。

氏族

筑波国造の氏族については、複数の説があります。『正倉院文書』には、筑波郡の役人である丈部直佐弥麻呂（はせつべのあたいさみまろ）の名が見られ、このことから丈部直氏が筑波国造の末裔であるとする説があります。また、孝謙天皇に仕えた采女の壬生直小家主女（みぶのあたいおえぬしめ）も、筑波国造の末裔と考えられています。彼女は神護景雲2年（768年）に常陸国造に任命されており、壬生直氏も筑波国造の一族であった可能性が示唆されています。

本拠

筑波国造の本拠は、筑波郡筑波郷にありました。現在の茨城県つくば市周辺がその中心地と考えられます。

支配領域

筑波国造の支配領域は、現在の茨城県土浦市の一部、つくば市、つくばみらい市の大部分に相当します。この地域は当時「筑波国」と呼ばれていました。興味深いことに、『常陸国風土記』には、筑波の旧名が「紀国（きのくに）」であったと記されています。この「紀国」は、毛野川（鬼怒川）流域と連なり、下毛野地域にも近接していたため、ある時期には那須地域だけでなく、常陸国の新治、白壁、筑波を含む地域も「毛野」と呼ばれていた可能性が指摘されています。4世紀後半から5世紀初頭にかけて、この地域には前方後円墳が築かれ、栃木県の小川・湯津上一帯と茨城県の筑波・柿岡一帯に分布していました。茨城県石岡市の丸山古墳と、栃木県那須郡那珂川町の那須八幡塚古墳は、墳丘の形や内部構造までが一致しており、この地域の文化的なつながりを示唆しています。

氏神

筑波国造の氏神は、筑波山神社です。筑波山神社は筑波郡に唯一存在する式内社であり、筑波男神と筑波女神を祀っています。筑波山は古くから信仰の対象であり、筑波国造にとっても重要な存在だったと考えられます。

墓

筑波国造の墓と伝えられる古墳がいくつか存在します。

后塚古墳：茨城県土浦市にある全長53.8メートルの前方後方墳です。古墳時代前期に築造されました。
王塚古墳：茨城県土浦市にある全長84メートルの柄鏡式前方後円墳です。后塚古墳の南東に隣接して築造され、后塚古墳の次の時代のものと考えられていましたが、近年では異論も出ています。
筑波八幡塚古墳：茨城県つくば市にある全長90メートルの前方後円墳です。6世紀前半に築造され、阿閉色命の墓であるという伝承がありますが、築造時期が異なるため、国造になった者の墓と見られています。

これらの古墳は、筑波国造の権力や文化を示す重要な遺跡です。

まとめ

筑波国造は、常陸国南部の古代史を語る上で欠かせない存在です。彼らの支配領域や氏族、信仰、そして墓と伝わる古墳は、古代社会の構造や文化を理解するための重要な手がかりとなります。今後も研究が進むことで、さらに多くの事実が明らかになることが期待されます。

参考文献

『國史大辭典』（吉川弘文館）
坂本太郎・平野邦雄監修『日本古代氏族人名辞典』（吉川弘文館、1990年）
『日本史広辞典』（山川出版社）
* 『神道大辞典』（臨川書店）

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