蜀道の険

蜀道の険について

蜀道の険（しょくどうのけん）は、戦国時代において秦の恵文王が蜀王を欺いて整備させたとされる道を指します。この蜀道は、漢中から成都に至る桟道であり、その険しさから古くから多くの人々に語り継がれてきました。著名な詩人、李白は「蜀道の難は、青天に上るよりも難し」と歌い、その難所具合を際立たせています。

特に有名なのは、垂直に切り立った岩肌に取り付く蜀の桟道であり、現在は観光名所として訪れる人々を惹きつけています。四川省の広元市朝天区にある明月峡や、陝西省漢中市勉県の石門桟道などがその例です。1982年、これらの場所を含む沿線の景勝地は「剣門蜀道風景名勝区」として、中華人民共和国の国家級風景名勝区に指定されました。

また、蜀道は歴史においても重要な役割を果たしました。蜀の名将である諸葛亮は、魏の長安（現在の西安）を攻めるために、成都から漢中へと向かう全長600kmの金牛道を軍用に整備しました。この金牛道は、大巴山脈の中を通り、剣門関という重要な地点を経由します。

剣門関は、孔明によって改修され、李白もその重要性を詠った「一夫関に当たれば万夫も開くなし」という言葉が残っています。これは、一人の兵士が守っている限り、多くの敵は関を突破できないという意味で、戦略的に非常に大切な場所であったことがうかがえます。

金牛道および剣門関を通じて、諸葛亮は蜀の軍をさらに進軍させ、敵地へと乗り込んでいきました。その道中には、壮大な自然の景観も広がっています。また、明月峡には川沿いの断崖に木の杭を打ち込んで作られた小道があり、これも孔明の指示により整備されたと伝えられています。

このように、蜀道の険は単なる道ではなく、歴史や文化、戦略と深い関わりを持つ場所であり、中国の歴史の中でも特異な存在感を放っています。蜀道を訪れることで、その厳しい自然環境と歴史の重みを実感できることでしょう。

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