蜷川式胤

蜷川式胤：博物館設立と日本陶器の海外紹介に尽力した明治の官僚・好古家

蜷川式胤（にながわのりたね、1835年 - 1882年）は、明治初期に活躍した官僚であり、古美術研究家としても知られています。文部省博物館（現在の東京国立博物館）の開設に尽力し、日本の陶器を海外に紹介するなど、文化財保護と国際交流に貢献しました。

生涯と業績

蜷川式胤は、東寺の坊官の家に京都で生まれました。幼い頃から古美術に興味を持ち、研究に励みました。1869年（明治2年）には、太政官制度取調御用掛として政府に出仕し、その後、外務省、文部省などを経て博物館設立に携わります。

博物館設立への貢献

1872年（明治5年）、文部省博物局が開設されると、蜷川式胤は博覧会の準備に奔走し、湯島聖堂博覧会の開催に貢献しました。これは、東京国立博物館の始まりとされています。また、正倉院の調査にも参加し、宝物保護に尽力しました。

陶器研究と海外への紹介

退官後、自宅に『楽古舎』という出版所を開設し、陶器に関する図録『観古図説陶器之部』を刊行しました。この図録は、海外のコレクターにも評価され、日本の陶器が世界に紹介されるきっかけとなりました。また、エドワード・S・モースなど海外の研究者とも交流し、日本の陶器に関する知識を伝えました。

人物像

蜷川式胤は、古美術に対する深い知識と情熱を持ち、日本の文化財を保護し、海外に紹介することに尽力しました。また、研究者やコレクターとの交流を通じて、日本の美術に対する理解を深めました。

著述

『旧江戸城写真帖』
『壬申検査社寺宝物図集』
『観古図説 陶器之部』
『観古図説 城郭之部』
『観古図説 瓦之部』

家族

蜷川家は代々学術・文化に貢献しており、子息の蜷川第一は美術史家として、孫の蜷川明は美術コレクターとして活躍しました。また、柏樹書院という学塾を運営し、人材育成にも力を注ぎました。

蜷川式胤の功績

蜷川式胤は、明治初期の日本において、博物館設立、文化財保護、国際交流に大きく貢献しました。彼の業績は、今日の日本の文化財行政や美術研究に大きな影響を与えています。

参考資料

蜷川第一編、『蜷川式胤追慕録』
ドロシー・G・ウェイマン著、蜷川親正訳、『エドワード・シルベスター・モース』
守屋毅編、『共同研究 モースと日本』
* 今井祐子『陶芸のジャポニスム』

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