湯島聖堂

湯島聖堂とは

湯島聖堂は、東京都文京区湯島に位置する、江戸時代に創建された孔子廟であり、かつては幕府直轄の学問所でした。現在では国の史跡に指定されており、その歴史的価値と美しい景観から多くの人々が訪れます。

歴史

1690年、江戸幕府5代将軍徳川綱吉によって、儒学者・林羅山が上野忍が岡に建てた私邸内の孔子廟「先聖殿」に代わるものとして創建されました。綱吉はこれを「大成殿」と改称し、自ら額を書いたと伝えられています。その後、幕府の学問所として発展し、多くの人材を輩出しました。

当初、大成殿は朱塗りで青緑に彩色されていましたが、度重なる火災で焼失し、幕府の方針転換もあり、荒廃しました。しかし、1797年に林家の私塾が幕府直轄の「昌平坂学問所」、通称「昌平黌」となり、湯島聖堂は大成殿のみを指すようになりました。1799年には大改築が行われ、大成殿は創建時の2.5倍の規模となり、黒塗りの建物に改められました。

明治維新後、昌平坂学問所は閉鎖されましたが、その教育・研究機関としての流れは、後の東京大学へと繋がります。また、学制公布前に維新政府が設置した東京府中学が、この地を仮校舎としたことから、日本の学校教育発祥の地とも言われています。その後、文部省や博物館、師範学校などが周辺に設置され、学問の中心地としての役割を果たしました。現在、学問所の跡地の多くは東京医科歯科大学のキャンパスとなっています。

1872年には、大成殿で東京初の博覧会「湯島聖堂博覧会」が開催され、これが後の東京国立博物館の始まりとなりました。1922年には国の史跡に指定されましたが、翌年の関東大震災でほとんどの建物が焼失しました。現在の大成殿は、1935年に伊東忠太の設計、大林組の施工により再建されたもので、鉄筋コンクリート造りとなっています。

現在の湯島聖堂

現在、湯島聖堂の境内には、1975年に中華民国台北ライオンズクラブから寄贈された世界最大の孔子像が安置されています。また、孔子の高弟たち、四賢像（顔子、曾子、思子、孟子）も祀られています。大成殿は土日祝日のみ一般公開されており、見学することができます。

史跡指定と文化財保護

1922年、湯島聖堂の敷地は国の史跡に指定され、その現状変更は厳しく制限されています。1956年には財団法人斯文会が管理団体となり、1986年から文化庁による保存修理工事が行われ、1993年に完了しました。

主な行事

湯島聖堂では、以下のような主な行事が開催されています。

正月特別参観・元旦素読始め（1月1日 - 1月4日）
孔子祭（4月第4日曜日）
鍼灸祭（5月第3日曜日）
神農祭（11月23日、勤労感謝の日）
湯島聖堂文化講演会（年1回、不定）

その他

湯島聖堂は、過去にドラマのロケ地としても使用され、多くの人に親しまれています。敷地内には珍しい楷の木があり、御茶ノ水駅に架かる聖橋は、湯島聖堂とニコライ堂を結ぶ橋であることに由来します。また、敷地内を東京メトロ千代田線のトンネルが通過しており、その換気口設置にあたっては、文化財保護との兼ね合いで議論がありました。2018年には強風で看板が倒れ、歩行者が負傷する事故も発生しました。

アクセス

JR東日本御茶ノ水駅 徒歩2分
東京メトロ千代田線新御茶ノ水駅 徒歩2分
東京メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅 徒歩1分


湯島聖堂は、歴史と文化が深く根付いた場所であり、その静謐な雰囲気は訪れる人々を魅了します。ぜひ一度、足を運んでその魅力を感じてみてください。

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