蟲のこゑ

虫のこえ

「虫のこえ」は、元々は『蟲のこゑ』という表記で、文部省唱歌として発表されました。現在では一般的に『虫のこえ』と表記されています。

歴史

この歌は1910年（明治43年）に『尋常小学読本唱歌』で初めて発表されました。その後、『尋常小学唱歌』の第三学年にも収録され、広く親しまれるようになりました。

当時の『尋常小学読本唱歌』に収録された楽曲は、文部省が東京音楽学校に依頼して編纂委員会を組織し、教授を中心とした委員たちが合議して作曲したものです。そのため、個々の楽曲の作詞者や作曲者は公表されておらず、著作権は文部省が所有していました。

1998年に告知された『小学校学習指導要領』では、第2学年の歌唱共通教材として指定されています。さらに、2006年（平成18年）には文化庁と日本PTA全国協議会によって「日本の歌百選」にも選ばれました。

歌詞

初出時の歌詞は以下の通りです。

あれ松蟲が鳴いてゐる。　ちんちろちんちろ　ちんちろりん。

あれ鈴蟲も鳴き出した。　りんりんりんりん　りいんりん。

あきの夜長を鳴き通す　あゝおもしろい蟲のこゑ。

> きりきりきりきり　きりぎりす。　がちやがちやがちやがちや　くつわ蟲。

あとから馬おひおひついて　ちよんちよんちよんちよん　すいつちよん。

秋の夜長を鳴き通す　あゝおもしろい蟲のこゑ。

1932年の『新訂尋常小学唱歌』では、2番の歌詞にある「きりぎりす」が「こほろぎや」に改められました。これは、「きりぎりす」が古語でコオロギを指し、「きりきり」という歌詞もコオロギの鳴き声を表現しているため、虫の名前と鳴き声を一致させる意図がありました。しかし、この変更によって「きりきり きりきり きりぎりす」という韻は失われることになりました。

編曲

「虫のこえ」は、様々な編曲が施されています。

虫のこえハクランカイ - 春畑セロリ編曲（『おもしろ変奏曲にアレンジ! 〜童謡唱歌〜』に掲載）
“秋の夜長の虫たちの大音楽会”変奏曲 - 大宝博編曲（『おもしろ変奏曲にアレンジ! 〜日本のうた〜』に掲載）

関連事項

マツムシ
スズムシ
キリギリス → コオロギ
クツワムシ
* ウマオイ

「虫のこえ」は、日本の秋の風情を感じさせる、情感豊かな歌として、世代を超えて歌い継がれています。

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