血染めの感状

血染めの感状（ちぞめのかんじょう）

血染めの感状とは、戦国時代の永禄4年（1561年）に勃発した、武田信玄と上杉謙信の間で繰り広げられた第四次川中島の戦いにおいて、上杉謙信が目覚ましい戦功を挙げた家臣たちに与えた感状、すなわち武功を称える証状の通称です。この戦いは川中島の戦いの中でも特に激しい戦いとして知られ、上杉・武田両軍ともに多大な犠牲を払いました。そのような苛烈な戦場を生き抜き、顕著な働きを見せた武将たちに与えられた感状は、単なる功績の証明書以上の重みを持っていました。

この感状が「血染め」と呼ばれるのは、感状そのものが物理的に血で染まっていたからではありません。その由来は、戦功を挙げた家臣たちが、自らの血潮を流す覚悟で戦ったのはもちろんのこと、多くの一族郎党や近親者を失いながらも主君への忠義を尽くし、戦いに勝利をもたらしたことに関係しています。つまり、これは彼らが流した血、そして失った多くの命と引き換えに勝ち取った感状であるという意味が込められています。戦場での凄惨な犠牲の上に成り立つ武功と、それに対する主君からの報奨という、当時の武士の生き様を象徴する名称と言えるでしょう。

第四次川中島の戦いは、永禄4年9月10日に八幡原で展開され、上杉謙信の車懸かりの陣と武田信玄の啄木鳥戦法が激突するなど、壮絶な白兵戦が繰り広げられました。この激戦において上杉軍の危機を救い、あるいは敵陣深く攻め入るなどの功績を挙げた武将たちが、血染めの感状の対象となりました。

この特別な感状を拝領したのは、以下の7名の武将です。

色部 勝長（いろべ かつなが）
安田 長秀（やすだ ながひで）
中条 藤資（なかじょう ふじすけ）
垂水 源二郎（たるみ げんじろう、荒川 長実とも）
本多 右近允（ほんだ うこんのじょう）
松本 忠繁（まつもと ただしげ）
岡田 但馬（おかだ たじま）

このうち、色部勝長、安田長秀、中条藤資、垂水源二郎の4名は、越後国の国衆である揚北衆（あがきたしゅう）と呼ばれる勢力に属していました。彼らは越後北部の地理に明るく、謙信の関東出兵などにも従軍した有力な家臣団でした。揚北衆を含むこれらの武将たちが、川中島の激戦でいかに奮戦したかがうかがえます。

これらの感状のうち、4通が現存しており、歴史資料としても非常に貴重です。現存する感状は、当時の紙に書かれたものですが、「血染め」という通称が示すように、そこに至るまでの道のりが、多くの血と犠牲の上に成り立っていたことを静かに物語っています。

血染めの感状は、単なる歴史上の出来事を記した証ではありません。それは、戦国時代の武士たちが主君への忠誠と引き換えに払った犠牲、そしてその凄まじい戦場での功績を後世に伝える重要な遺物であり、川中島の戦いの壮絶さを今に伝える生々しい証左と言えるでしょう。

関連項目

感状'>感状
川中島の戦い'>川中島の戦い
揚北衆'>揚北衆

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