血清総蛋白

血清総蛋白（けっせいそうたんぱく）

血清総蛋白（Total Serum Protein; TP）は、血液の液体成分である血清に含まれる全ての種類のタンパク質の合計濃度を示す基本的な臨床検査項目です。

名称と略称

血清総タンパク質、あるいは単に総タンパク質（Total Protein）とも呼ばれます。生化学検査の分野では、英語名の頭文字をとってTPと略されることも広く行われています。

測定対象

血清中には数百種類以上のタンパク質が存在し、それぞれが体の機能維持に重要な役割を果たしています。これらの血清タンパク質の大部分を占めるのは、アルブミンとグロブリンです。グロブリンはさらにアルファ1（α1）、アルファ2（α2）、ベータ（β）、ガンマ（γ）グロブリンなどに分類されます。

これらの個々のタンパク質の詳細な分析（例えば、電気泳動による分画と定量）は、特定の疾患の診断に非常に有用ですが、高価な装置と時間が必要となります。それに対して、血清総蛋白検査は、これらのタンパク質全体の合計量をより手軽に測定することができます。

測定方法

血清総蛋白の測定にはいくつかの手法があります。伝統的で広く用いられているのはビウレット反応を利用する方法です。この他にも、ケルダール法、色素結合法、光の屈折率を利用する方法などがあります。

近年では、ほとんどの臨床検査施設で自動分析装置が導入されており、血清総蛋白は他の多くの血液検査項目と同時に、迅速かつ自動的に測定されるのが一般的です。

基準範囲と結果の解釈

血清総蛋白の基準範囲は、検査に用いる機器や測定方法、あるいは検査を受ける人の年齢や性別、施設によって若干異なる場合があります。しかし、一般的に成人における基準範囲は6.0 g/dLから8.0 g/dL程度（リットルあたりの単位では60 g/Lから80 g/L程度）とされています。

血清総蛋白の値は、体の水分バランス、栄養状態、肝臓や腎臓の機能、免疫系の状態など、全身の健康状態を総合的に反映するため、その解釈は単独で行われることは少なく、他の様々な検査結果や患者さんの症状、病状の経過などと合わせて総合的に判断されます。

変動要因と注意点

血清総蛋白の値は、血液中の水分量によっても影響を受けやすい性質があります。例えば、脱水状態になると血液が濃縮され、相対的にタンパク質の濃度が高くなるため、値が高く出ることがあります。逆に、水分過多の状態では値が低めになる可能性もあります。

また、食事の影響も考慮されるため、より安定した正確な値を得るためには、通常、早朝の空腹時に採血することが推奨されています。

低値を示す場合

血清総蛋白が基準範囲より低い値を示す場合、主に以下のような原因が考えられます。

タンパク質の合成低下: タンパク質を主に合成する臓器である肝臓の機能が低下している場合（肝硬変、慢性肝炎など）
栄養不足: 食事からのタンパク質摂取量が不足している、または消化管からの吸収が不十分な場合
タンパク質の喪失:
腎臓の病気（ネフローゼ症候群など）により、本来再吸収されるべきタンパク質（特にアルブミン）が尿中に大量に漏出している場合
消化管からの出血や炎症などによりタンパク質が失われるタンパク漏出性胃腸症
生理的要因: 妊娠後期に血液量が増加することで、相対的に濃度が薄まりやや低値を示すことがあります。
免疫不全: 非常に稀ですが、免疫グロブリンの産生異常に伴う免疫不全の兆候として低値が見られることがあります。

高値を示す場合

血清総蛋白が基準範囲より高い値を示す場合、主に以下のような原因が考えられます。

脱水: 最も一般的な原因です。水分摂取不足、過度の発汗、下痢、嘔吐などにより血液が濃縮され、一時的に高値となります。水分を補給することで速やかに正常値に戻ることが多いです。
異常タンパク質の増加: 特定の疾患により、体内で異常なタンパク質が過剰に産生される場合。
免疫グロブリンの増加:
多発性骨髄腫などの形質細胞疾患において、特定の種類の免疫グロブリン（Mタンパク）が異常に増加する場合
慢性的な炎症や感染症、自己免疫疾患などにより、防御反応として免疫グロブリンが全体的に増加する場合（高ガンマグロブリン血症）
ホジキンリンパ腫や白血病など、一部の血液疾患
その他: 葉酸代謝に関連する特定の遺伝子変異（例: MTHFR遺伝子のC677T変異）を持つ人で、値が高めになる傾向が報告されています。

まとめ

血清総蛋白検査は、比較的簡便でありながら、体の水分状態、栄養状態、肝臓や腎臓の機能、免疫系の異常など、多岐にわたる情報を得るための重要なスクリーニング検査です。異常値が検出された場合は、その原因を特定するために、アルブミンとグロブリンの比率（A/G比）の確認や、血清タンパク質電気泳動など、さらに詳しい検査が追加で行われることが一般的です。

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