行順寺

行順寺（ぎょうじゅんじ）について

行順寺は三重県いなべ市北勢町南中津原に位置する真宗大谷派（東本願寺）に属する寺院で、その正式名称は蓮華山二階堂行順寺です。寺院の本尊は阿弥陀如来であり、地域の浄土真宗の中心として長い歴史を歩んできました。天然記念物ではなく、実際には蓮如の御旧跡寺院として多くの信仰を集めています。

寺院は、北伊勢地方の浄土真宗信者の重要な拠点となっており、重要な歴史的文書、特に北伊勢一向一揆に関する古文書を所蔵しています。この寺院の魅力は、毎年4月下旬に開催される蓮如忌であり、この際には寺宝も開放され、多くの参拝者が訪れて賑わいを見せます。現在の本堂は1745年に再建されたもので、寺の歴史を物語っています。

歴史的背景

行順寺の創建は平安時代、天長4年（827年）にさかのぼります。当初は高野山の末寺で真言宗として活動していましたが、戦火によって焼失しました。その後、室町時代の文安5年（1448年）に刑部坊空賢と弟子の正玄坊が本願寺の蓮如に帰依し、浄土真宗に改宗しました。この時、阿弥陀如来の尊形を拝領し、蓮如が来寺する際には多くの記憶が残されています。

蓮如は、1449年に北国へ向かう途中、近江から竜ヶ岳を越え行順寺に逗留し、四日間にわたって過ごしました。この際、彼が染筆した六字名号「虎尾(斑)の名号」が襲蔵されており、現在でも蓮如忌に開帳されています。

寺の宝物としては、親鸞聖人の木像や蓮如上人、実如上人、教如上人の筆による六字名号や御文などが所蔵されています。これらの宝物は、寺院の歴史を深く示す重要な資料となっています。

行順寺の設立当初の位置は現在より北側であり、後に発見された第六世正明の時代には、織田信長との関係において重要な役割を果たしました。この時期に発見された古文書や武具が寺内から出土し、歴史研究は進められています。また、元寺跡には「刑部井戸」や無宿人が掘った「報恩水道」、さらには蓮華谷の「蓮如上人腰掛の石」など、歴史を物語る名所が今も残っています。

現在の運営

現行の住職は仏教学者の田代俊孝で、第十八世住職として行順寺を運営しています。作家の連城三紀彦は、田代住職に学び、彼のもとで衆徒として活動していましたが、2013年にその生涯を終えました。現在、行順寺の運営は、歴史と伝統を踏まえながら継続されています。

行順寺には二つの道場が存在します。一つは其原道場で、こちらは1721年に設立され、支坊として行順寺の衆徒が在勤しています。もう一つは麻生田説教場で、こちらも行順寺の支坊ですが、住職が兼務する形で運営されています。どちらの施設も、地域の信者たちにとっての重要な集いの場となっています。

行順寺は、歴史的な背景や貴重な寺宝、さらには地域との密接な関係により、浄土真宗の中で特異な存在として今日までその役割を果たしています。

もう一度検索