教如

教如：戦国と茶の湯の狭間で生きた浄土真宗の僧侶

教如（きょうにょ）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した、浄土真宗の僧侶にして、茶人としても名高い人物です。真宗大谷派の第12代門主であり、東本願寺の創建者として知られています。父は、浄土真宗の第11世法主である顕如、母は如春尼で、弟には真宗興正派の第17世門主である顕尊、浄土真宗本願寺派（西本願寺）の第12世宗主である准如がいます。

激動の時代を生き抜いた生涯

永禄元年（1558年）、顕如の長男として生まれた教如。幼少期については不明な点が多いものの、父・顕如が門跡となったことや親鸞三百回忌など、華やかな儀式を経験する一方で、本願寺火災による寺内町の焼失など、厳しい時代を肌で感じて育ちました。

永禄13年（1570年）、13歳で得度し、本願寺の後継者である新門となりました。そして、同年に勃発した織田信長との石山合戦では、父を支え、石山本願寺に籠城して信長と徹底抗戦。この間、越前朝倉氏の娘である三位殿との婚約もありましたが、合戦中の教如の動向は明確には分かっておらず、謎に包まれた部分も少なくありません。

天正8年（1580年）、顕如が信長との講和を受け入れ、大坂本願寺を退去する際に、教如も当初は講和に賛成の姿勢を見せました。しかし、直後に講和を撤回し、抗戦を主張。父と対立し、大坂本願寺に籠城する「大坂拘様」を引き起こしました。この籠城は、父子間の不和を生じ、教如は顕如から義絶される事態にまで発展します。

大坂退去後も、教如は各地を転々とし、信長への抵抗を続けました。本能寺の変の際には、美濃と越前の国境付近にいたとされ、その後は越中一向一揆の残党を率いて信長軍の後方攪乱などを企てたとされています。本能寺の変後に顕如との和解を果たしますが、この一連の行動は、後の本願寺東西分裂の遠因ともなりました。

豊臣政権との関わりと本願寺継承

顕如の死後、教如は本願寺を継承。豊臣秀吉に接近し、九州平定にも同行するなど、豊臣政権との緊密な関係を築きました。千利休の茶会にも頻繁に参加し、茶人としての側面も持ち合わせていました。しかし、秀吉の死後、弟の准如への本願寺法主の譲渡を命じられ、隠居を余儀なくされます。

東本願寺の創建と西本願寺との対立

隠居後も、教如は各地の門徒への布教活動を続け、新たな拠点として東本願寺を創建。これは、本願寺教団の東西分裂を決定づける出来事となります。西本願寺（准如派）との間では、門徒や家臣の引き抜きなどを巡る争いが続き、教如は徳川家康との関係を巧みに利用して勢力を拡大していきました。

茶人としての教如

教如は古田織部らに師事し、茶の湯を嗜みました。織部の茶会にも頻繁に参加しており、茶人としての教養も高く評価されています。

後世への影響

教如の生涯は、戦国時代から江戸時代への転換期における浄土真宗の動向、そして本願寺東西分裂という大きな出来事を理解する上で、欠かせない要素となっています。東本願寺の創建は、浄土真宗の歴史に大きな足跡を残し、現在に至るまでその影響は続いています。彼の行動は常に政治的、宗教的な思惑が絡み合い、単純な善悪で判断できるものではありません。現代においても、その複雑な生涯は研究者の間で活発に議論されています。

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