実如

実如：戦国時代の嵐を生き抜いた浄土真宗の指導者

実如（じつにょ）は、室町時代中期から戦国時代にかけて活躍した浄土真宗の僧侶であり、本願寺第9世宗主、真宗大谷派第9代門首、山科本願寺住職として知られています。諱は光兼、院号は教恩院、法印権大僧都の位階にありました。

激動の時代と複雑な出自

長禄2年（1458年）、浄土真宗の第8世宗主、蓮如の8番目の息子として誕生しました。母は蓮祐尼で、父・蓮如の2番目の妻でした。幼少期は光養丸と呼ばれていましたが、後に左大臣日野勝光の養子となり、青蓮院で得度。大納言の称号を得ています。これは、複雑な政治的背景を持つ出自を反映していると言えるでしょう。

家督継承と権力闘争

父・蓮如が延暦寺と対立し、京都を追われた文正2年（1467年）には、一時的に家督継承を巡る混乱がありました。蓮如の隠居と長男順如の廃嫡が強要され、実如への家督継承が検討された時期もありましたが、本願寺の勢力回復とともに、順如が再び法嗣とされたようです。しかし、文明15年（1483年）、長兄順如の死により、実如が改めて本願寺を継承することとなりました。

教団運営と政治的駆け引き

延徳元年（1489年）、父・蓮如の隠退に伴い、実如は第9世宗主となります。当時、父・蓮如によって急激に拡大した教団を維持・発展させるという大きな課題がありました。その中で、実如は管領細川政元との良好な関係を重視しました。細川政元は、かつて加賀一向[[一揆]]が守護富樫政親を攻め滅ぼした際、将軍足利義尚の討伐令を撤回させるなど、本願寺にとって大きな力になっていたからです。しかし、この政治的な繋がりは、実如を数々の困難に巻き込むことにも繋がりました。

明応4年（1495年）には、反細川政元派の河合宣久の粛清を容認するなど、政治的判断を迫られる場面もありました。明応8年（1499年）には父・蓮如が亡くなり、翌年には嫡男である照如も夭折するなど、悲劇的な出来事も経験しています。

反乱と追放

永正3年（1506年）には、細川政元の要請により河内国畠山義英討伐に協力したことが、摂津・河内の門徒の反発を招き、実如は大きな危機に直面します。実賢という異母弟が、石山御坊で法主の交替を求める事態に発展しました。しかし、実如はこれを武力によって鎮圧しました。

その後も、細川政元の要請により、越前国の朝倉氏や能登・越中国の畠山氏と戦いを繰り広げ、北陸地方で一揆が勃発します。九頭竜川の戦い、般若野の戦いなど、激しい戦いが繰り広げられました。

永正4年（1507年）には、細川政元の後継者争いに巻き込まれ、一時的に山科本願寺を追われ、近江堅田へ逃れるという苦難を経験します。

教団改革と晩年

永正6年（1509年）、山科本願寺に復帰した実如は、教団改革に着手しました。北陸門徒への一揆禁止、本願寺一族の一門一家制の導入など、様々な改革を実行しました。大永元年（1521年）には青蓮院脇門跡に任ぜられましたが、同年に次男円如が急死、円如の子である証如が後継者となります。

大永5年（1525年）、実如は68歳で亡くなりました。幼少の証如に代わり、実如の同母弟である蓮淳が後見人として本願寺を運営することとなりました。

実如の生涯は、戦国時代の激しい動乱と複雑な政治情勢の中で、浄土真宗の教団を維持発展させようとした、一人の宗教指導者の苦悩と決断の物語でした。

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