街の入墨者

あらすじ

『街の入墨者』は、昭和10年（1935年）に公開された時代劇映画で、山中貞雄が監督を務めました。原作は長谷川伸、製作は日活太秦撮影所、配給は日活です。

物語は、ヤクザの岩吉が、親分の金兵衛に裏切られたことを知り、彼を殺害するところから始まります。その後、岩吉は佃島の牢獄に送られますが、脱走を未然に防いだ功績により恩赦で釈放されます。ヤクザから足を洗うことを決意した岩吉は、妹夫婦のもとに身を寄せ、仕事を探し始めますが、前科者に対する世間の風当たりは厳しく、再就職は困難を極めます。さらに、かつての恋人にも裏切られ、絶望の淵に立たされます。そんな中、甲州屋に押し込み強盗が入り、街の人々は前科者である岩吉を疑います。しかし、事件の真相は意外なものでした。

作品背景

本作は、昭和10年度のキネマ旬報ベストテンで第2位に輝きましたが、残念ながら原版フィルムが消失しており、現在では鑑賞することができません。

『街の入墨者』は、前進座と日活の提携作品です。日本の活動写真は、歌舞伎の延長線上にあり、当初は女役を女形が演じていましたが、本作が公開された昭和10年には、すでに女優が一般的になっていました。しかし、本作では久しぶりに女形が起用され、岩吉のかつての恋人で、岩吉の入牢中に町の資産家と結婚した女性役を、河原崎國太郎が演じました。しかし、女優を見慣れた観客には女形の演技が不自然に映ったようで、時代劇において女形が出演した最後の作品とされています。

さらに、劇中の台詞も不自然だったため、当時前進座に入ったばかりの原ひさ子が吹き替えを担当したというエピソードも残っています。

キャスト

岩吉：河原崎長十郎
三次郎：中村翫右衛門
おきち：山岸しづ江
おたね：深水藤子
ひ－坊：宗春太朗
お雪：河原崎国太郎

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