衣笠 (重巡洋艦)

重巡洋艦「衣笠」：その艦歴と最期

日本海軍の青葉型重巡洋艦二番艦である「衣笠」は、1927年9月に竣工しました。その艦名は、竣工直前に艤装員長が軍務局に問い合わせたことに端を発するなど、複数の説が存在します。横須賀市の衣笠山、徳島県にある高越山（阿波富士）のいずれかを由来とする説が有力ですが、海軍省の見解は統一されておらず、諸説が混在しています。「衣笠」竣工後には、艦内神社に神奈川県横須賀市の走水神社と京都市の平野神社が祀られ、平野神社の近くには衣笠山が存在するなど、艦名と神社との関係も興味深い点です。

太平洋戦争開戦までの艦歴

「衣笠」の艦名は、当初一等巡洋艦として計画されたものの、その後軽巡洋艦「加古」の計画変更を経て、青葉型重巡洋艦の二番艦として命名されました。川崎重工業神戸造船所で建造され、1924年1月に起工、1926年10月に進水しました。同型艦「青葉」より起工は早かったものの、進水と竣工は「青葉」よりも遅れました。

竣工後、「衣笠」は第五戦隊に編入され、約2年間戦隊旗艦を務めました。その後は第七、第六戦隊などに所属し、1928年には日本海軍の艦艇として初めて航空機用カタパルトを装備するなど、近代化を進めました。1936年には「青葉」と追突事故を起こすも、大きな損傷はなく、1938年からは大規模な改装工事を経て、性能向上を図りました。太平洋戦争開戦前には第一艦隊第六戦隊に所属していました。

太平洋戦争緒戦

1941年11月、第六戦隊の一員として「衣笠」は南洋部隊に編入、グアム島攻略作戦に参加しました。その後、ウェーク島攻略作戦にも参加し、太平洋戦争緒戦を迎えました。ニューギニア方面への移動後も、ラバウル攻略や、ラエ・サラモア攻略、ブーゲンビル島攻略、アドミラルティ諸島攻略作戦など、数々の作戦を支援しました。しかしながら、これらの作戦において、「衣笠」が本格的な水上戦闘に参加する機会はほとんどありませんでした。

ポートモレスビー攻略作戦にも参加した「衣笠」は、空母「祥鳳」の護衛任務中に米軍機の空襲を受け、「祥鳳」が沈没する事態を目の当たりにしました。その後、ミッドウェー海戦の敗戦を受けてソロモン諸島の防衛強化のため、外南洋部隊に編入されました。

ガダルカナル島の戦い

ガダルカナル島の戦いが始まると、「衣笠」は第六戦隊所属として、第一次ソロモン海戦に参加しました。この海戦で「衣笠」を含む日本艦隊は米・豪軍の重巡洋艦を撃沈する戦果をあげました。しかし、この戦闘の後に「加古」が米潜水艦の雷撃で沈没しました。

その後も、「衣笠」はガダルカナル島への兵員・物資輸送作戦の支援や、ヘンダーソン飛行場への攻撃などに従事しました。第二次ソロモン海戦には参加しませんでしたが、水上偵察機による飛行場攻撃に参加しました。第二次水雷戦隊旗艦の「神通」が損傷した際には一時的に増援部隊旗艦を務めました。

サボ島沖海戦では、敵艦隊不在を信じて夜間航行中に米艦隊と遭遇し、先制攻撃を受けました。激しい戦闘の中で「衣笠」は奮戦し、軽微な損傷で辛くも生き延びました。この戦闘での「衣笠」の活躍は、連合艦隊参謀長宇垣纏少将の戦藻録にも記されています。

その後も、ヘンダーソン飛行場への艦砲射撃や、ガダルカナル島への輸送作戦支援などに従事しました。

沈没

1942年11月12日夜、第三次ソロモン海戦（第一夜戦）が勃発し、日本艦隊に大きな損害が出ました。11月13日夜から14日にかけて行われたヘンダーソン飛行場への砲撃任務の後、米軍機による空襲を受けました。複数の魚雷と爆弾の直撃を受け、艦橋の指揮系統が壊滅状態に陥りました。応急修理を試みましたが、空襲は続き、機関と舵が故障して航行不能に陥りました。そして、11月14日午前9時22分、「衣笠」は転覆、沈没しました。乗員511名が戦死し、生存者は僅かでした。12月15日、「衣笠」は軍艦籍から除籍されました。

歴代艦長

「衣笠」の歴代艦長には、田村重彦、岩村兼言、北川清など多くの海軍士官が名を連ねています。最後の艦長である沢正雄大佐は、沈没時に戦死しました。

参考文献

本文中には、多くの参考文献が用いられており、これらを通じて「衣笠」の艦歴をより詳細に知ることができます。これらの文献は、太平洋戦争における日本海軍の活動や、その艦艇の状況を理解する上で重要な資料となります。

もう一度検索