衣笠十四三

衣笠 十四三（きぬがさ としぞう）

衣笠十四三は、1900年4月17日に三重県亀山町で生まれた日本の映画監督であり、実兄に同じく映画監督の衣笠貞之助を持つ。彼の本名は小亀壽三で、昭和期を中心に多くの映画作品に携わった。訓練された彼は、創造的なビジョンを持ち続け、日本映画界において重要な役割を果たした。

来歴・人物

若いころの十四三は、20歳前後に富岡正らとともに旅芝居に取り組んでおり、その活動が彼の映画監督としての基盤を形成した。そこで富岡から溝口健二を紹介され、彼の映画制作の道が開かれることとなる。

1933年、新興キネマ京都撮影所に入社した後、彼は翌年に日活太秦撮影所へと移籍し、監督としてのキャリアを築き上げた。1935年には片岡千恵蔵プロダクションから『初祝鼠小僧』にて監督デビューを果たし、この作品は新興キネマによって配給され、同年の12月31日に公開された。このデビュー作は彼の名声を高めるきっかけとなった。

脚本のクレジットには、兄である貞之助の筆名「泉次郎吉」が使われ、一時期は「鈴鹿野呆六」や「鈴鹿野八作」といった十四三自身の筆名も使用されている。監督デビュー以降、彼は約5年間にわたり千恵プロや日活において様々な映画を監督し続けた。

後に東京に移住し、日本映画社などで短編映画を手がけることとなった。これらの作品でも彼の独特の視点と表現力が注目され、多くの観客を魅了した。

監督作品

衣笠十四三は、多数の監督作品を残しており、その中には映画界の重要な作品が多く含まれている。彼の代表作には、まず『初祝鼠小僧』（1935年）、続いて『刺青奇偶』（1936年）、『瞼の母』（1936年）、『松五郎乱れ星』（1937年）などがある。特に『刺青奇偶』や『瞼の母』は、そのストーリーと演出の巧妙さから高い評価を受けている。

さらに、日活太秦撮影所での作品も数多く、例えば『怪談牡丹燈籠』（1937年）や『続浮世三味線』（1937年）、『剣客商売』（1938年）などがあり、いずれも彼の独特な演出とストーリーテリングの技術が際立つものであった。特に『剣客商売』は、緊張感のあるストーリー展開と、強烈なキャラクター描写が印象的であり、現在でも多くのファンに愛され続けている。

最晩年

衣笠十四三は、1976年7月30日に東京の病院で脳血栓により亡くなった。76歳という生涯の中で、彼は多くの作品を通じて日本映画界に厚い足跡を残した。彼の作品は今なお色褪せることなく、映画史の中で重要な位置を占めている。彼が遺した作品群は、後世にわたって多くの映画人に影響を与えており、その業績は評価され続けている。

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