表衣

表衣（うわぎ・ひょうい・うえのきぬ）

表衣（うわぎ、ひょうい、あるいはうえのきぬと読まれる）は、日本の伝統的な装束において、身体の上部に重ねて着用される最外層に近い衣服の一種です。その名称や用途は、時代や装束の種類によって異なります。

特に、「うえのきぬ」という読み方は、男性の束帯などで用いられる外衣である「袍（ほう）」を指す際に使われることがあります。一方、「うわぎ」という読み方は、主に平安時代の貴族女性の装束として知られる「女房装束」、いわゆる十二単を構成する重要な要素の一つを指す場合に用いられます。

女房装束における表衣は、幾重にも重ねられた「袿（うちき）」からなる「五衣（いつつぎぬ）」、そのさらに上に着用する「打衣（うちぎぬ）」の上に重ねて羽織られる衣服です。多層構造の女房装束において、ちょうど五衣と打衣を覆い、一番外側に現れる衣として位置づけられます。この位置にあるため、装束全体の印象を決める上で非常に目に留まりやすい部分となります。

その形状は、単（ひとえ）や袿といった、他の重ね着に用いる衣と基本的な構造は大きく変わりません。しかしながら、表衣は一番外側近くに着用されるという特性から、特に意匠や素材の豪華さが求められることが多くあります。この視覚的な重要性から、表衣には豪華な生地が選ばれます。例えば、二陪織物（ふたえおりもの）のような、地に織り出された文様の上にさらに別の色糸で絵緯（えぬき）を織り込むといった、非常に複雑で手間のかかる、格式高い織物から仕立てられることがあります。こうした特別な織物を用いることで、着用者の身分や装束の格式を際立たせることが意図されています。

現代においても、表衣は特定の伝統装束の中でその役割を果たしています。例えば、女性神職の装束において表衣は重要な構成要素です。女性神職の表衣に用いられる生地には、厳格な定めがあり、特定の格式を持った織物が使われます。具体的には、正絹を用いた固く織られた綾織物で、表裏なく模様が現れる「正絹固地綾無双織」、欅（けやき）の意匠が三重に配され、向かい合う蝶が織り込まれたと見られる「三重欅向蝶」、井桁（いげた）や花菱（はなびし）、四つの花を組み合わせた複雑な文様の「井桁花菱四ツ華文」、そして亀甲（きっこう）紋様と向かい合う蝶を組み合わせた「亀甲向蝶」といった、それぞれに独特の織り方や意匠を持つ生地が用いられます。これらの生地は、神事における装束としての清浄さや格式を示すために選ばれています。

このように、表衣は身体の上部を覆う外衣として、古くは袍を指したり、女房装束の重要な一部として視覚的な役割を担ったり、現代では女性神職装束において特定の格式を示すために用いられるなど、その時代や文脈によって多様な意味合いを持ちながら、日本の伝統装束における重要な位置を占める衣服と言えます。特に、多層構造の装束の最外面近くに位置することで、その素材や意匠が全体の印象に大きく影響を与える点が、表衣の特徴と言えるでしょう。

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