袍

袍（ほう）

袍とは、日本や中国で用いられた衣服であり、特に日本では朝服の上衣として知られています。袍には、武官が着用する動きやすい闕腋袍（けってきのほう）と、文官が着用する縫腋袍（ほうえきのほう）の2種類があります。

歴史

「袍」という言葉の歴史は中国に起源を持ちますが、時代によってその意味合いは変化してきました。

中国における袍の変遷:
『礼記』には、詰め物の種類によって衣服を区別する記述があり、古くは詰め物をしたものを「袍」と呼んでいました。
唐の時代には、冬の常服の上衣を「袍」、夏の裏地のないものを「衫」と区別していました。
日本の朝服としての袍:
日本の朝服は、唐の常服を祖形としていますが、北朝の胡服の影響を受けています。
当初は脇の開いた「欠胯」と呼ばれるものでしたが、宇文護の建議により襴が付けられ、縫腋袍へと改良されました。
日本では『和名抄』に「縫腋袍」の記述が見られますが、中国では「有襴」と呼ぶのが一般的でした。
唐代以降も闕腋袍は用いられ、警衛や宦官などが着用する例が見られました。
日本における袍の変遷:
『日本書紀』には7世紀頃から「袍」の記述が現れます。
養老律令の衣服令では、親王・諸王・文官の朝服を「衣」（縫腋袍）、武官の朝服を「襖」（闕腋袍）と区別していました。
正倉院には闕腋袍の遺品が残っており、脇の開き具合などが分かります。
平安時代以降、公卿は武官を兼ねていても縫腋袍を着用し、四位、五位の武官は特定の儀式でのみ闕腋袍を着用しました。六位以下の武官は束帯では常に闕腋袍を着用しました。
元服前の者の束帯の袍も闕腋袍でした。
明治時代には、岡倉天心が司法官や弁護士の制服として闕腋袍をベースにしたものを考案しました。

構造

闕腋袍（欠腋袍）:
袖付けの下側で脇が縫われておらず、前身と後身が分かれています。
襴（裾の布）を伴いません。
裾が縫い合わされていないため、動きやすい形状です。
和訓は「わきあけのうへのきぬ」です。
縫腋袍:
脇が縫われています。
裾周りに襴が縫い付けられています。
和訓は「まとはしのうへのきぬ」です。
襴（らん）:
袍の裾に縫い付けられた布で、袍の裾をさらに下に伸ばす役割があります。
両足を分けずに包む形状で、スカート状に見えますが、円筒状には縫われていません。
反物から裁断した長方形の布を、身体の上下方向と直角になるように縫い付けます。
襴の脇線の位置には、アコーディオン状のひだがある場合があります。
襴には、蟻先（ありさき）と呼ばれる左右に張り出した部分があることがあります。

関連項目

束帯
平安装束
* 青侍: 袍の色に由来する言葉。

袍は、時代の変遷とともに形を変えながら、日本の服装文化に深く根付いてきました。その構造や歴史を知ることは、日本の文化理解を深める上で重要な要素となります。

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