衾

衾（ふすま）とは

衾とは、平安時代を中心に用いられた、日本古来の寝具の一種です。長方形の一枚の布でできており、現代の掛け布団のように、就寝時に身体にかけて使用されました。その形状と用途から、後世の掛け布団を指して「衾」と呼ぶこともあります。

衾の歴史と文化

衾は、単なる寝具としてだけでなく、日本の歴史や文化の中で重要な役割を果たしてきました。例えば、大嘗祭においては、悠紀殿と主基殿の中に衾が設けられます。この儀式における衾の起源は、日本書紀に記された天孫降臨の神話に遡るとされています。

日本書紀によると、天孫降臨の際、高皇産霊尊（タカミムスビノミコト）が瓊瓊杵尊（ニニギノミコト）を「真床追衾（まとこおふすま）」で覆い、天磐座（あめのいわくら）を放ち、天八重雲（あめのやえぐも）を排（お）い分けて降臨させたとされています。また、別の一書では、高皇産霊尊が瓊瓊杵尊に「真床覆衾（まとこおほふすま）」を着せて、天八重雲を排い分けて、天下し奉ったと記されています。この神話が、大嘗祭における衾の起源とされています。

また、平安時代には、結婚の儀式においても衾が用いられました。夫婦となった二人に衾を掛ける「衾覆い（ふすまおおい）」または「同衾（どうきん）」と呼ばれる儀式が行われていました。これは、二人の結びつきを象徴する重要な儀式であり、衾が単なる寝具以上の意味を持っていたことを示しています。

衾と現代

現代では、衾そのものが使われることはほとんどありませんが、その概念は掛け布団へと受け継がれています。また、日本の伝統文化を語る上で、衾は欠かせない要素であり、その歴史的な背景や文化的な意義は、現在でも多くの人々に知られています。

関連事項

* 紙衾（かみふすま）
紙で作られた衾。詳細は不明であるが、葬儀などの際に使用された可能性がある。

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