袋小路 (太田裕美の曲)

袋小路（ふくろこうじ）

「袋小路」は、日本のシンガーソングライターである太田裕美によって歌われた楽曲です。彼女のキャリア初期における重要な作品の一つとして知られており、1975年に発表されたサードオリジナルアルバム『心が風邪をひいた日』の中に収められています。

楽曲の誕生とその背景

この「袋小路」が収録されたアルバム『心が風邪をひいた日』は、当時のニューミュージックシーンにおいて注目を集めた作品です。楽曲は、LPレコード時代の構成において、アルバムのA面2曲目という比較的早い位置に配置されており、リスナーに強い印象を与えるナンバーでした。楽曲の制作には、日本のポピュラー音楽界を代表する才能が集結しています。作詞を手掛けたのは、時代を象徴する数々のヒット曲の詞を生み出してきた稀代の作詞家、松本隆。作曲を担当したのは、シンガーソングライターとして独自のスタイルを確立し、後のJ-POPシーンに絶大な影響を与える荒井由実（現在の松任谷由実）です。そして、編曲は、多くのアーティストの楽曲を手掛け、洗練されたサウンドデザインで知られる林哲司が担当しました。

日本音楽史における特別なコラボレーション

この「袋小路」が、日本の音楽史において特筆されるべき理由の一つに、作詞の松本隆と作曲の荒井由実が初めて共同で制作した楽曲であるという点があります。それぞれの分野で確固たる地位を築いていた二人が初めてタッグを組んだ記念碑的作品であり、異なる感性が融合して生まれた独特の世界観は、発表当時、音楽ファンの間で大きな話題を呼びました。また、同じくこのアルバム『心が風邪をひいた日』には、同じく松本隆作詞・荒井由実作曲による「ひぐらし」も収録されており、この初期の共作が、二人のその後の創作活動にどのような影響を与えたのか、興味深いところです。

時を経て、新たな形での展開

オリジナル盤がリリースされた後、「袋小路」は時代の流れと共に様々な形でリスナーに届けられ続けました。音楽メディアがレコードからCDへと移行する中で、この楽曲も1991年にはアルバム『心が風邪をひいた日』のCD化に伴い、再びリリースリストに加わりました。

さらに、「袋小路」は太田裕美自身にとって特に思い入れの深い楽曲であったようです。後にリリースされたライブアルバム『Little Concert』には、この楽曲がオリジナルバージョンとは異なるアレンジで改めて収録されています。自身のオリジナルアルバム、あるいはそれに準ずる主要なアルバムに同じ楽曲が二度収録されることは、アーティストのキャリアにおいて非常に珍しいケースです。太田裕美の楽曲の中で、作詞・作曲が伊勢正三による「君と歩いた青春」と共に、この「袋小路」が、オリジナルアルバムに二度登場するという稀有な例となっています。これは、彼女がいかにこの楽曲を大切に考えているかの証と言えるでしょう。

映画への起用

発表から長い年月を経た後も、「袋小路」は新たなメディアを通じて再び多くの人々の耳に触れる機会を得ました。2002年8月24日に公開されたSABU監督の映画『DRIVE』では、この楽曲が作品世界を彩る挿入歌として採用されました。堤真一と柴咲コウが主演を務めたこのロードムービーにおいて、「袋小路」は登場人物たちの旅や心情に寄り添い、印象的なシーンを演出しました。映画の公式情報などでも、この楽曲が主題歌もしくは挿入歌の一つとして紹介されています。

このように、「袋小路」は、日本の音楽界における伝説的なコラボレーションから生まれ、時代の変遷と共に形を変えながらも、アーティスト自身の特別な思い入れ、そして映画への起用といった様々な展開を経て、今なお多くの人々に聴き継がれている名曲と言えます。

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