裏面打法

裏面打法（うらめんだほう・りめんだほう）

裏面打法とは、卓球におけるペンホルダーラケット特有の打法の一つであり、ラケットの裏面、つまり通常は使用しない面にラバーを貼り、その面で打球する技術の総称です。

概要

ペンホルダーラケットの裏面打法は、バック側に飛んできたボールに対し、ラケットの裏面に貼られたラバーを使用して打球することで、手首の可動範囲を最大限に活用し、従来のペンホルダーラケットによるバックハンドよりも強力な返球を可能にします。当初は、ペンホルダーの弱点とされていたバック側への下回転系のボールに対するバックハンドドライブ攻撃として用いられていました。

技術の発展に伴い、ブロックやフリックなど、シェークハンドラケットのバックハンド打法に匹敵するほどの高度な技術として利用されるようになりました。裏面打法は戦術の幅を広げる一方で、裏面で打つという特性上、習得には相応の練習と慣れが必要です。通常のペンホルダーラケットは片面のみにラバーを貼って使用しますが、裏面打法ではシェークハンドラケットと同様に両面にラバーを貼ります。そのため、ラケットの重量が増加し、裏面打法を効果的に使用するには、体力と筋力が求められます。

ラケットの形状は、一般的に角型の日本式ペンホルダーよりも丸型の中国式ペンホルダーが推奨されます。これは、ラケットの重心がグリップ付近にある丸型ラケットの方が、重心が先端付近にある角型ラケットよりも操作性に優れているためです。

歴史

前史

裏面打法を国際大会で初めて使用したのは、中国の葛新愛選手であると言われています。彼女は1979年の世界卓球選手権で女子シングルス優勝を果たしました。当時は、バック前に浮いたボールを裏面で打球する目的で使用されており、1試合での使用頻度は1、2本程度と限定的でした。1980年代の中国では、ペンホルダーの「右打ち左押し」の速攻が主流であり、裏面打法を使用する選手はごく少数でした。

1989年の世界卓球選手権ドルトムント大会で、中国男子チームがスウェーデン男子チームに大敗したことを受け、当時の中国卓球協会会長であった徐寅生氏は、バック側への下回転系のボールに対応できないペンホルダーの弱点を指摘し、ペンホルダーの打法改革として裏面打法を提唱しました。これに伴い、ラケットの裏面へのラバー貼り付けが半ば強制的に行われましたが、ラケットの総重量増加によるスイングスピードの低下や、フォアハンドとバックハンドの切り替えの遅延といったデメリットがあり、打法として確立されていなかったため、競技レベルでの普及は限定的でした。

裏面打法の普及

その後、劉国梁選手が裏面打法を本格的に取り入れ、実績を上げるにつれて、多くの指導者が裏面打法の有効性を認識し、研究が進められるようになりました。かつては「現代卓球においてペンホルダーは勝てない」と評された時代もありましたが、1999年の世界選手権アイントホーフェン大会で劉国梁選手が男子シングルスで優勝し、世界チャンピオンに輝きました。

近年では、ペンホルダーによる両ハンドドライブ型を完成させた王皓選手が、裏面打法を駆使してアテネオリンピックと北京オリンピックで男子シングルスの銀メダルを獲得し、2009年世界選手権横浜大会では男子シングルスで優勝を果たしました。馬琳選手は、フットワークをベースにしたフォアハンド主戦型に裏面打法を取り入れたプレースタイルで、2005年の世界選手権上海大会で男子シングルス準優勝、2008年北京オリンピック男子シングルスで優勝しています。また、馬琳選手は劉国梁選手が優勝した1999年の世界選手権アイントホーフェン大会男子シングルスでも準優勝しています。

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