補助GPS

補助GPS（A-GPS）とは

補助GPS（Assisted GPS、A-GPS）は、GPSによる位置情報取得の初期時間を短縮するためのシステムです。GPS以外の衛星測位システムにも同様の仕組みが存在します。

GPSの課題

GPS受信機は、GPS衛星からの電波を受信し、三角測量によって位置を算出します。しかし、衛星からの情報伝送速度が遅いため、初期測位には時間がかかります。具体的には、複数の衛星から軌道情報を取得するのに12.5分程度かかることがあります。また、途中で信号が途絶えると、最初からやり直す必要があり、さらに時間がかかります。

カーナビゲーションシステムでは、前回取得した情報を記憶することで、エンジン始動後すぐに位置情報を表示できます。しかし、長期間情報を受信しなかった場合や、移動中に電源が切れていた場合など、保存されたデータと実際の位置が乖離すると、測位に時間がかかるという問題がありました。例えば、ユピテルのポータブルカーナビでは、初回使用時に20分以上かかる場合があるとされています。

補助GPSの仕組み

補助GPSは、携帯電話ネットワークやインターネットなどの高速な通信手段を利用して、衛星の軌道情報や補正情報を受信機に提供します。これにより、受信機は衛星から時刻情報などの小さなデータだけを受信すれば、すぐに位置計算に取り掛かることができます。これにより、初期測位時間を大幅に短縮できます。

また、携帯電話やWi-Fiネットワークの基地局の位置情報や電波強度を利用して、おおよその位置を特定することも可能です。GPSだけでは測位結果が変動することがありますが、LPS（LTE Positioning System）やWPS（Wi-Fi Positioning System）といった地上系の測位技術を併用することで、より安定した位置情報を得ることができます。多くの携帯電話では、これらの技術を補助GPSと組み合わせて利用しています。

GPS衛星は約30基存在しますが、補助GPSでは、算出したおおよその位置情報をもとに、その場所で受信できるGPS衛星情報が選択的に提供されるため、効率的な測位が可能です。

利用上の注意点

携帯電話ネットワークに接続していても、常に補助GPS機能を利用できるとは限りません。特に、ローミングエリアでは利用できないことが多いです。基地局の位置情報は、ネットワーク事業者が自社の顧客向けに提供しているサービスであり、ローミング先には提供されないためです。

Wi-Fiモデルのタブレット端末では、屋外での測位時にモバイルWi-FiルーターがWPS測位の妨げになる場合があります。そのため、頻繁に測位機能を利用するナビ用途には適していません。アップルのiPadでは、Wi-FiモデルにはGPS機能が搭載されておらず、LTEモデルのみにGPS機能が搭載されています。

まとめ

補助GPSは、GPSの初期測位時間を短縮するだけでなく、測位精度の向上にも貢献する重要な技術です。ただし、利用環境によっては制限があるため、注意が必要です。

参考情報

ディファレンシャルGPS
リアルタイム・キネマティック・ポジショニング
* 衛星航法補強システム

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