裳着

裳着（もぎ）についての詳細

裳着とは、平安時代から安土桃山時代にかけて実施された女子の成人を示す通過儀礼のことを指します。この儀式は、女子が成人を迎えたことを一族や他家に示す重要な意味を持っていました。一般的には、初潮を迎えた10代前半の女子が対象とされ、成人としての儀式が行われます。

この儀式の核心は、初めて裳（も）を着用することによって成人と認められることです。裳着を終えた女子は、以降の婚姻に必要なお墨付きを得ることができました。衣装としての裳を着る役割は「腰結（こしゆい）」と呼ばれ、一般に名の知られた徳望のある女性が選ばれました。

儀式日には吉日を選定し、裳の腰紐を結ぶ際や髪を整えるなど、幅広い準備が行われます。特に「鉄漿親（かねおや）」という立ち会い者の元で、お歯黒や眉の手入れ、化粧を施して殿上眉（引眉）を描くことが求められました。これら一連の作業が終わると、その女子は正式に成人と認定されます。

裳着を済ませた女子は、以降、小袖は白色、袴は緋色が定められていました。ただし、江戸時代以降は、婚姻が行われるまで袴の色は濃紫が用いられるようになりました。このように、裳着は女性にとって人生の重要な節目を迎える意味を持ち、またその後の生活においても大きな影響を与える儀式でした。

江戸時代に入ると、武士階級や庶民階級においても女性の成人儀礼は男性と同様に元服と呼ばれるようになりました。また、精神的な成熟や社会的な役割を考慮し、実施年齢は18歳から20歳程度に引き上げられたり、結婚に絡めて行われるようになりました。

このように、裳着は単なる衣装の着用儀式に留まらず、女性にとって社会的な地位獲得のための重要な儀礼であったことがわかります。他の関連する成人儀礼としては、元服や成人式、七五三などがあることにも注目しておくべきです。これらの行事は、現在においても日本文化の中で重要な位置を占め、世代を超えて受け継がれています。

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