裴鉶

裴鉶の生涯と業績

裴 鉶（はい けい）は、晩唐の時代に活躍した官僚であり、作家でもありました。彼の正確な生年や没年は不明ですが、主に懿宗と僖宗の時代、大中から光啓（文徳）の間に活動していたことが知られています。裴は、伝奇小説集『伝奇』の撰者として特に有名であり、また「谷神子」という号を名乗っていました。

官僚としての経歴

裴鉶は、懿宗の咸通5年（864年）から9年にかけて、高駢（こうべん）の下で静海軍節度使の掌書記として仕官していました。この官職にある間、彼は侍御史や内供奉といったさらに上位の官職も与えられています。当時、高駢は道教に傾倒しており、神仙の物語を好んでいたため、裴鉶は彼の影響を受け、『伝奇』を著すきっかけとなりました。作品の中には道教的な要素が強く表れており、裴自身も洪州の鍾陵で道教の修行に励んだと言われています。

ただし、裴が道教を信奉していたのか、もしくは高駢に迎合しただけだったのかは、明確にはわかっていません。

官職の昇進

僖宗乾符5年（878年）には、裴は御史大夫に任じられ、成都軍節度使の副使となりました。この頃、高駢は剣南西川節度使を兼任しており、裴の赴任は高が成都を去った後であったと思われます。そのため、当時の伝奇作家の中でも裴は官僚として出世した部類に入ると考えられ、彼の昇進には高の影響があったと推測されています。

しかし、彼のその後についての記録は残されていません。光啓3年（887年）には、高駢が弑殺され、その部下が悉く誅殺された際には、裴は巧みにその危険から逃れたとされています。

作品について

裴の著作には、代表作の『伝奇』のほか、詩や碑文も含まれています。『全唐詩』巻597に収められている「文翁石室」に題した七言律詩が1首残されており、また『全唐文』巻805には「天威径新鑿海派碑」という作品も見受けられます。さらに、裴は「谷神子」という別名で『道生（士）旨』という作品も著しています。

影響や評価

裴鉶の作品は、中国文学史において重要な位置を占めています。特に彼の『伝奇』は、後の作家たちにも多大な影響を与え、道教的なテーマが取り入れられた作品は、特に伝説や幻想が交じり合ったものとされています。また、彼の作品の中には時代背景や文化を反映したものも多いことから、歴史学的にも注目されています。

関連項目

裴鉶の影響を受けた映画作品として、黒衣の刺客という作品があります。この映画は、彼の伝奇小説『聶隱娘』を基に制作されたものです。

裴鉶の作品や経歴は、晩唐時代の文化や思想を知る上で非常に貴重な資料となっています。その独自の視点と作品の内容から、彼の存在は今なお中国文学に影響を与え続けています。

もう一度検索