製造小売業

製造小売業とは

製造小売業（せいぞうこうりぎょう）は、卸売・小売業に属する業態の一つで、商品をその場で製造し、個人消費者に直接販売する事業形態を指します。この業の重要な特徴は、「製造」と「小売」を同一の事業所で行う点にあり、アパレル産業に特化したSPA（Speciality Store Retailer of Private Label Apparel）としても知られています。

日本標準産業分類における位置づけ

日本では、製造小売業は日本標準産業分類において、特定の事業所が商品を製造し、同時にそれを販売する形態としてカテゴライズされています。具体的な例としては、菓子店、パン屋、弁当屋、豆腐店、そして調剤薬局などが挙げられます。この分類は業種によって異なるため、中分類や小分類で「製造小売業」が単独の分類として存在することはなく、細分類として製造小売業とそれ以外に区分されます。たとえば、菓子小売業には「製造小売」と「製造小売でないもの」が明記されています。

また、飲食業態における寿司屋のように、注文を受けてから製造を行う飲食店は、大分類Mにおける「持ち帰り飲食サービス業」に該当することもあります。消費税の簡易課税制度における業態区分も同様で、製造小売業とは異なる扱いを受ける場合があります。

企業と事業所の違い

ここでの重要な点は、「事業所」が分類の単位であり、「企業」ではないということです。つまり、ある企業が製造工場と小売店舗を別々の場所で運営し、製造から販売までの一貫したプロセスを持つ場合、製造工場が「製造業」とされ、小売店舗が「小売業」と見なされます。これは、例えば和洋菓子のメーカー（虎屋、モロゾフ、ユーハイムなど）がこの形態に該当します。産業分類は統計目的で作成されるため、実際の企業活動とは必ずしも一致しないことがあります。

SPA（製造小売業）

SPAは、メーカーと小売業者が一つになった形態で、自社で企画したブランドを自社店舗で直販することを特徴とします。1986年にGAPがこの業態を定義し、その成功から日本でも「製造小売業」という言葉が広がりました。従来の日本の衣料品業界では、メーカーから卸売業者を経由し、小売店で販売されるという方法が一般的でした。

SPAでは、製造から販売までのプロセスが同じ企業によって行われるため、消費者に対して迅速に対応できるメリットがあります。日本では、小売業者がメーカーとして進出するケースに加えて、製造卸が自らのブランドを持ち、直接小売に参入することもSPAに含まれます。商品企画や製造と小売が結びつく流通機能は、必ずしも製造小売業者が自ら行う必要はありません。

SPAの実例

SPA業態に該当する企業には、以下のような代表的な名前があります。例えば、アパレル業界ではGAP、ZARA、H&M、ファーストリテイリング（ユニクロ、ジーユー）などが有名です。それ以外にも、IKEA、ニトリ、ダイソー、JINSなどもこの業態に属します。また、SPAという用語が広まる以前から存在するDCブランドも製造小売業に分類されることが多いです。

製造小売業は、効率的な流通が求められる現代において、特にアパレル業界での競争力を高める要素の一つとなっています。企業はこのビジネスモデルを通じて、消費者のニーズに迅速に応えることができ、トレンドを先取りする力を身に付けています。

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