西の里信号場

西の里信号場

歴史を刻んだ二つの信号場

北海道北広島市に位置するJR北海道千歳線の「西の里信号場（にしのさとしんごうじょう）」。この名称を持つ信号場は、実は千歳線の歴史において二度、異なる場所に存在しました。一つは1973年（昭和48年）に現在のルートへ切り替えられる前の旧線時代に、そしてもう一つが現在の新線上に設けられたものです。本稿では、新旧二つの西の里信号場がたどった歴史と、現在の信号場の状況について詳しく見ていきましょう。

初代：長距離区間を支えた信号場

旧線上にあった初代の西の里信号場は、1961年（昭和36年）1月14日に当時の日本国有鉄道によって設置されました。この信号場が設けられた背景には、当時の千歳線における上野幌駅（旧線上の初代駅）と北広島駅間の距離が9.5キロメートルと、全線で最も長かったことがあります。この長い駅間では、列車の行き違いや追い抜きが難しく、輸送上のボトルネックとなり得ました。そこで、輸送力の増強を図る一環として、この区間の中間に信号場が設けられたのです。

初代信号場は、列車の交換を可能にするためのシンプルな構造でした。2本の線路を持ち、上下いずれかの列車が待避することで、反対方向の列車が通過できるようになっていました。しかし、千歳線は札幌近郊の輸送需要増加に対応するため、新たなルートへの切り替え工事が進められました。そして1973年（昭和48年）9月10日、苗穂駅から北広島駅までの旧線区間が廃止され、白石駅・新札幌駅を経由する新線が開業したことに伴い、初代の西の里信号場もその歴史に幕を閉じました。

2代目：列車増発に対応、そして休止へ

現在の西の里信号場は、初代信号場からやや南に位置する、新線上の北広島駅と上野幌駅（現在の駅）の間に、1992年（平成4年）7月1日にJR北海道によって開設されました。この時期は、新千歳空港駅が開業するなど、千歳線の列車本数が飛躍的に増加した頃にあたります。増え続ける列車を円滑に運行させるため、駅間での列車待避や追い抜き機能を果たす信号場が必要とされ、この地に新たな西の里信号場が誕生しました。

開設当初の2代目信号場は、上下線それぞれに本線と副本線（待避線）が1本ずつ設けられ、計4線の構造で、両方向で列車が待避できる設計でした。ただし、上下線で副本線の有効長に違いがあり、特に上り線用の副本線は6両編成までしか収容できない長さでした。

しかし、この2代目の信号場も、設置から約四半世紀を経て状況が変わります。2016年（平成28年）頃から、この信号場での列車待避や追い抜きが実質的に行われなくなりました。その後、待避線として使用されていた副本線は撤去されています。

現在の役割と周辺環境

副本線が撤去された現在、西の里信号場は、かつてのような列車待避機能を持つ場ではなくなっています。単に列車がどの位置にいるかを管理するための境界点（閉塞境界）としての役割のみを果たしており、列車がここで停車して他の列車を待つことはありません。事実上の休止状態と言えるでしょう。

信号場は、北海道北広島市の郊外に位置しています。西側には手つかずの広大な森林地帯が広がり、信号場自体も周囲を木々に囲まれています。そのため、列車に乗っていても窓の外からその存在をはっきりと確認することは難しい場所です。北側には工業地区が、東側には住宅地が広がっていますが、信号場周辺は比較的静かな環境にあります。近くを通る道としては、サイクリングロードとして利用される北海道道1148号札幌恵庭自転車道線や、種苗管理センター中央農場などがあります。

西の里信号場 年表

新旧二つの西の里信号場の主な出来事を時系列でまとめます。

初代 西の里信号場
1961年（昭和36年）1月14日：日本国有鉄道の信号場として、千歳線旧線上の上野幌駅（初代） - 北広島駅間に開設。
1973年（昭和48年）9月10日：千歳線旧線（苗穂 - 北広島間）が新線（白石 - 新札幌 - 北広島間）へ切り替えられたことに伴い廃止。
2代目 西の里信号場
1992年（平成4年）7月1日：JR北海道の信号場として、千歳線新線上の北広島駅 - 上野幌駅（現在の駅）間に開設。
2016年（平成28年）頃：列車待避機能としての実質的な使用を停止。その後、副本線が撤去される。

終わりに

このように、西の里信号場という名称は同じながら、時代の要請や路線の改良によって二度にわたり設置され、そして現在は本来の機能を停止しているという珍しい歴史を持っています。駅として旅客が乗り降りする場所ではありませんが、日本の鉄道網、特に北海道における鉄道輸送の変遷を知る上で興味深い存在と言えるでしょう。

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