西トーゴランド

西トーゴランドは、国際社会においてはガーナ共和国の一部と広く認識されているものの、自らを独立した国家であると主張する地域です。主にガーナのヴォルタ州とオティ州にまたがる5つの地域について領有権を唱えています。この地域の分離主義者たちは、2020年9月25日に一方的な独立宣言を行いました。また、西トーゴランドは2017年以降、「代表なき国家民族機構」（UNPO）の加盟組織として活動しています。

歴史的背景

西トーゴランドの歴史は、1884年にドイツ帝国が設立したドイツ領トーゴランドに遡ります。ドイツの統治下で「模範植民地」と見なされ、一定の発展を遂げました。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発すると、イギリスとフランスの連合国軍によって侵攻され、ドイツが敗北した後のヴェルサイユ条約に基づき分割されることとなりました。トーゴランドの西部はイギリスの委任統治領である英領トーゴランドとなり、東部はフランスの統治下に置かれました。第二次世界大戦後、英領トーゴランドは国際連合の信託統治領となりますが、引き続きイギリスの行政下にありました。将来を決定するための動きとして、1956年に英領トーゴランドの地位に関する住民投票が実施され、西トーゴランド地域の人々のうち58%が、翌1957年に独立を控えていたガーナへの統合に賛成票を投じました。

近年の独立運動と2020年の独立宣言

2010年代に入ると、再び独立を求める動きが活発化します。「祖国研究グループ財団」（Fondation du Groupe d'étude de la Patrie, HSGF/FGEP）は、2017年5月9日に一度独立宣言を試みましたが、これは成功しませんでした。さらに、2019年5月7日には、この団体が民兵組織を保有しているとの疑惑に対し、幹部であるエマニュエル・アグバボール氏がこれを否定する声明を出しています。

そして2020年9月25日、分離主義者たちは独立に向けた具体的な行動に出ました。彼らはヴォルタ州北トング地区の複数の警察署を襲撃し、ガーナ治安部隊に対して当該地域からの撤退を要求しました。祖国研究グループ財団（チャールズ・コルミ・クゾルズ氏が率いるとされる）は、報道声明を通じてガーナからの離脱と地域の主権を宣言しました。

ガーナ政府の反応とその後

この独立宣言に対し、ガーナ政府は当初これを深刻なものとは受け止めず、「冗談」と見なす姿勢を示しました。しかし、著名な安全保障専門家からは、これを国家安全保障に関わる問題として扱うべきだとの強い懸念が表明されました。独立宣言に続く混乱の中で、地域ではガーナ治安部隊と分離主義者との間で衝突が発生し、死傷者が出たことが報告されています。ガーナ政府は、衝突発生に関する情報を事前に把握していたと主張していますが、現地のガーナ治安情報筋は、主導団体である祖国研究グループを統制下にあると述べる一方で、分離主義者側は治安部隊から武器を奪い、道路を封鎖するなど、一定の影響力を行使したと伝えられています。ガーナ共和国大統領は、分離派との交渉に応じない姿勢を明確にしています。

人口統計と社会

西トーゴランドとされる地域には、およそ400万人が居住していると推定されています。使用される言語は多様で、公用語である英語に加え、エウェ語、アダングメ語、アヴァタイム語など、多くの地元言語が話されています。住民の宗教は、キリスト教、イスラム教、そして伝統的なブードゥー教が主なものです。この地域の人々の大多数を占めるのはエウェ人であり、民族的なアイデンティティが分離運動の背景の一つにあると考えられます。

地域への影響と将来への懸念

西トーゴランドを巡る動きは、ガーナ国内だけでなく、周辺諸国にも潜在的な影響を及ぼす可能性があり、懸念されています。このような分離運動は、他の地域の分離主義運動に波及する可能性があります。例えば、カメルーンの英語圏で発生し、公然たる武力紛争に発展したケースなどがその一例として挙げられます。さらに、このような不安定化は、聖戦士運動の拡大といった他の安全保障上のリスクと複合的に作用し、地域の安定をさらに損なう可能性も指摘されています。この問題の行方は、ガーナおよび西アフリカ地域の将来に影響を与える可能性があります。

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