西バライ

西バライ：アンコール地域の巨大な貯水池

西バライ（英語: West Baray、クメール語: បារាយណ៍ទឹកថ្លា, Baray Teuk Thla）は、カンボジアのアンコール地域に位置する、巨大な貯水池です。東西に長く延びる長方形の形状をしており、アンコール・トムのすぐ西側に位置しています。その大きさは、東西約8キロメートル、南北約2.1キロメートルに及び、アンコール地域最大のバライとして知られています。この巨大な水域は、高い土堤によって囲まれており、中央には人工の島に建てられたヒンドゥー教寺院、西メボンが存在します。

歴史

西バライの建設は、11世紀にスーリヤヴァルマン1世の統治下で始まり、その後ウダヤーディチャヴァルマン2世の時代に完成したと考えられています。アンコールの技術者たちは、過去の建築様式を参考にしながらこの壮大な貯水池を造り上げました。例えば、東側の堤防は、以前ヤショーヴァルマン1世が築いた首都の防壁の一部を再利用していると考えられています。また、西バライの建設によって、以前から存在した地域が破壊または水没した箇所も見られます。南側の堤防は、レンガ造りのピラミッド寺院アック・ヨムを部分的に埋めており、西側の堤防はかつて居住地であったことが考古学的調査によって判明しています。この地域からは、713年にさかのぼる女王ジャヤデーヴィに捧げられた田を記録した碑文も発見されており、初期の定住を示す証拠となっています。

機能

当初、西バライは乾季に灌漑用水路へ水を供給するための巨大な貯水槽として機能すると考えられていました。しかし、その後の研究では、バライが象徴的な役割を果たしていたという説が有力になっています。特に、中央に位置する西メボン寺院と共に、ヒンドゥー教の天地創造における海を表現しているとされています。今日では、南側の堤防に灌漑用の水門が設置され、水位を調整し、周辺の農地への灌漑に利用されています。西バライは、西端では一年を通して水を湛えており、雨季には東側の堤防まで水が達します。

現代における西バライ

現在、西バライは澄んだ穏やかな水面が広がり、地元住民にとって水泳やボート遊びの人気スポットとなっています。また、水上飛行機の着陸場所として利用されることもあります。

参考文献

Rooney, Dawn. Angkor. Fourth Edition. Airphoto International Ltd. 2002.
Laur, Jean. Angkor: An Illustrated Guide to the Monuments. Flammarion 2002

関連項目

バライ
東バライ
西メボン

外部リンク

浅野泰弘 「アンコール朝の繁栄の源「西バライ」」 Civil Engineering Consultant, Vol. 230 January, 2006

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