西上野侵攻

西上野侵攻

西上野侵攻は、戦国時代の永禄年間（1557年～1567年）に、甲斐の武田信玄が上野国（現在の群馬県）西部を支配下に置くために行った一連の戦いです。この侵攻は、信玄が宿敵である上杉謙信と対峙した川中島の戦いと並行して行われました。武田氏は、西上野の要衝である箕輪城を攻略し、この地域を支配下に収めることを目指しました。

概要

1557年、武田信玄は川中島の戦いと並行して西上野への侵攻を開始しました。しかし、上杉氏の家臣であった長野業正が巧みな戦術で武田軍を迎え撃ち、侵攻は当初難航しました。長野業正は、瓶尻の戦いや若田原の戦いで武田軍を翻弄し、侵攻を食い止めました。しかし、1561年に業正が死去すると、武田軍は後を継いだ業盛を激しく攻め立て、1566年に箕輪城を落城させ、西上野を領国化しました。

小田井原の戦い

1547年、信玄は志賀城を攻略し、甘楽郡の国衆を傘下に収めました。この戦いの結果、武田氏は西上野への侵攻を本格化させることが可能となりました。

瓶尻の戦い

1557年4月、甲相駿三国同盟を結んだ武田信玄は、後北条氏の要請で西上野に侵攻しました。長野業正は瓶尻で武田軍を迎え撃ちましたが敗れ、箕輪城に退きました。武田軍は箕輪城を攻めますが、損害が大きく、長尾景虎（上杉謙信）が川中島に出陣したとの報を受けて撤退しました。

若田原の戦い

1559年、武田軍は周辺の国衆を懐柔し、鼻高砦に陣を敷きました。対する長野業正は若田原に陣を構え、奇襲によって武田軍を翻弄しました。武田軍は攻めあぐね、陣を払わざるを得ませんでした。

桧平の合戦

1560年、上杉謙信が関東に侵攻すると、長野業政方の小幡景定が、小幡憲重・小幡信実父子が不在の国峯城を乗っ取りました。さらに、小幡景定は砥沢城を攻略しようとしますが、砥沢城の小幡信実が武田信玄に救援を要請。武田軍は信州から飯富虎昌、小山田信義を派遣しますが、常住寺付近での戦闘で糧道を絶たれ撤退しました。

西上野への本格進出

1561年9月、第四次川中島の戦いの後、信玄は西上野への侵攻を本格的に開始しました。信濃の松原神社で必勝祈願を行った後、武田軍は余地峠を越え、高田城、国峯城を攻略しました。この時、信玄に庇護されていた小幡憲重・信実親子が国峯城に復帰しました。倉賀野城を攻撃しましたが、橋爪若狭守らの奮戦により攻略に失敗しました。この侵攻で甘楽郡は武田氏の勢力下に入りました。西上州の国衆は生き残りを模索し、和田業繁のように武田氏に通じる者もいましたが、長野氏、安中氏、倉賀野氏などは抵抗を続けました。

吾妻郡域の戦い

武田氏は西上州と同時に吾妻郡域にも進出しました。吾妻郡では、武田方についた鎌原氏と上杉方についた斎藤氏の対立が激化していました。1563年、斎藤憲広は白井長尾氏の援軍を得て長野原城を攻略しましたが、武田軍は真田幸隆を派遣し、岩下城を攻略。斎藤一族を懐柔し、吾妻郡の支配を確立しました。

西上野の征服

信玄は、箕輪城、嶽山城、尻高城、白井城、惣社城を攻略目標とし、1565年10月に嶽山城、1567年3月に白井城を攻略。長野業正の死後、箕輪衆は求心力を失い、高田氏、和田氏、倉賀野氏などが脱落しましたが、業盛は抵抗を続けました。1566年、武田軍の総攻撃により箕輪城は落城し、業盛は自刃しました。これにより、武田氏は1567年までに西上野の征服を完了しました。ただし、多胡・緑埜二郡は後北条氏の支配下にありましたが、両家の手切れにより、信玄はこれら二郡も接収し、西上野を完全に武田分国としました。1567年8月、武田家に従う信濃・上野の武将たちは忠節を誓う起請文を奉納しました。

西上野侵攻は、武田信玄による領土拡大政策の一環であり、川中島の戦いと並行して行われた戦略的な戦いでした。この戦いにより、武田氏は上野国西部を支配下に置き、その勢力を拡大しました。しかし、この侵攻は、上野の国衆たちの間で、武田氏に従うか抵抗するかの選択を迫るものでもありました。この戦いは、戦国時代の複雑な権力関係と、各勢力の生き残りをかけた戦いを象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

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