西住小次郎

西住小次郎：日中戦争の軍神

西住小次郎（にしずみ こじろう、1914年1月13日-1938年5月17日）は、日中戦争で活躍した大日本帝国陸軍の軍人です。熊本県出身で、陸軍士官学校を卒業後、歩兵として満州事変に従軍しました。その後、戦車兵に転科し、第二次上海事変や徐州会戦で戦車長として数々の戦闘に参加、その勇敢な戦いぶりから戦死後、軍部により公式に初めて「軍神」と称えられました。本稿では、彼の生涯、戦功、そして「軍神」となった背景について詳細に解説します。

幼少期から軍人への道

西住小次郎は、軍人だった父・三作と母・千代の間に生まれました。父は日露戦争に従軍し、祖父・深九郎も西南戦争に参加するなど、家系には軍隊との深い関わりがありました。幼少期から体が弱かったものの、優秀な成績で小学校、中学校を卒業、陸軍士官学校への入学を目指しました。

軍学校での日々と満州事変

陸軍士官学校では、親友の病気や退学、父との死別など、数々の困難を経験しました。1934年卒業後、歩兵として満州事変に従軍した経験から戦車の重要性を認識し、自ら戦車兵への転科を希望、戦車部隊に配属されました。

日中戦争での活躍

1937年、第二次上海事変に参戦。戦車小隊長として、呉淞に上陸、その後、いくつもの激戦を戦い抜きました。34回もの戦闘に参加し、5回も重傷を負いながらも前線を離れることはありませんでした。部下の信頼も厚く、上官の負傷時には中隊長代理を務めるなど、部隊を指揮し、多くの戦果を挙げました。

戦死と「軍神」への祭り上げ

1938年5月17日、徐州会戦中の戦闘で戦死しました。24歳の若さでした。戦死の状況は、偵察中に中国軍の狙撃を受け、出血多量で亡くなったとされています。

彼の死後、上官である細見惟雄大佐は、西住小次郎の武勇を広く国民に知らしめようと、陸軍省記者倶楽部で講演会を開催するなど、積極的に彼の功績を世に広めました。新聞やラジオ報道により、西住は瞬く間に国民的な英雄、「軍神」として祭り上げられました。この背景には、日中戦争の長期化による国民の厭戦ムードの高まりの中で、国民の士気を鼓舞する必要があったという側面も指摘されています。

西住小次郎の人物像

西住は、軍規を厳守する一方で、部下思いの優しい人物でした。自分の手柄を誇示することを嫌い、常に謙虚な姿勢を保っていました。読書家で、特に「名将言行録」を愛読していたと言われています。また、詩吟や口上が得意で、しばしば詩を作っていたことでも知られています。

西住小次郎と戦後の評価

戦後、西住小次郎は軍神として扱われながらも、その功績や人物像については様々な意見が生まれました。作家司馬遼太郎は、西住が「軍神」となった背景について、戦車兵であったこと、そして軍部による宣伝が必要だったことなどを指摘しています。西住の戦車、そして遺品は現在も熊本県護国神社に保存され、慰霊祭が行われています。

関連人物

西住小次郎を取り巻く人物も、彼の人生に大きな影響を与えました。上官の細見惟雄大佐、中隊長の高橋清伍大尉、そして彼を支えた部下たちなど、様々な人物が西住の生涯に関わっています。特に高松高雄上等兵は、西住の最期を看取った人物として知られています。

西住小次郎を題材とした作品

西住小次郎の生涯は、小説や映画、歌謡曲など、様々な作品に脚色され、現在も語り継がれています。菊池寛による小説『西住戦車長伝』は特に有名で、映画化もされました。

まとめ

西住小次郎は、日中戦争で活躍した陸軍軍人で、戦死後「軍神」として称えられました。彼の生涯は、戦争の悲劇と同時に、人間の勇気や忠誠心を象徴する物語として、現在も人々の記憶に刻まれています。彼の功績や人物像は、歴史を学ぶ上で重要な視点を提供するとともに、戦争と平和について考えるきっかけを与えてくれます。

もう一度検索