西四辻公業

西四辻公業（にしよつつじ きみなり/きんなり、1838年3月30日 - 1899年10月7日）は、江戸時代後期から明治時代を生きた、重要な役割を果たした公家、政治家です。権中納言・高松公祐を父に持ち、堂上家である西四辻家の養子となりました。

公業の出自は、藤原北家閑院流四辻家の分家にあたり、家格は羽林家・新家で、高い社会的地位にありました。彼は幼い頃から優れた教育を受け、歌道にも造詣が深かったと伝えられています。二条派の歌道の宗匠家である父の影響が大きかったと考えられます。

安政5年（1858年）、公業は八十八卿列参に加わり、幕府の外交政策に反対する立場を取りました。これは、尊王攘夷の思想が台頭していた当時において、大きな決断でした。その後、慶応2年（1866年）には朝政刷新を訴え、その結果、一時的に蟄居を命じられるなど、激動の時代を生き抜きました。

明治維新後、公業は明治2年（1869年）に大阪府知事に就任します。知事として、彼は府内の教育制度改革に尽力しました。当時、近代国家建設に向けて教育の普及が急務とされていた時代背景もあり、府内に120校以上の小学校建設という、当時としては大規模な計画を推進しました。この計画の実現には多くの教員が必要となり、府は知識人である士族を中心に、全国から教員を招集する必要に迫られました。この取り組みは、日本の近代教育制度確立に大きく貢献したと言えるでしょう。秋山好古など、後に歴史に名を残す人物も、この時、大阪府の小学校教員として活躍しました。

明治15年（1882年）には、自由民権運動の指導者であった板垣退助が岐阜で襲撃される事件が発生しました（板垣退助岐阜遭難事件）。この事件では、公業は明治天皇の勅使として現場に赴き、負傷した板垣を見舞うとともに、天皇からの見舞金300円を伝達するという重要な役割を果たしました。この出来事は、公業の天皇への忠誠心と、政治的な手腕の高さを示すエピソードと言えるでしょう。

その後、公業は侍従となり、明治天皇の歌道師範を務めるなど、朝廷においても重要な地位を占めました。明治17年（1884年）には子爵に叙せられ、その功績は広く認められました。

公業の功績は、政治家としての活動にとどまりません。教育への貢献、天皇への忠誠、そして歌道師範としての活動など、多方面にわたって才能を発揮した人物でした。彼の生涯は、激動の時代のなかで、理想を追い求め、国のために尽くした、稀有な存在であったと言えるでしょう。また、彼の玄孫には評論家の川本三郎氏がいます。

西四辻公業の生涯は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』にも登場し、明治維新後の日本の近代化に貢献した人物として描かれています。彼の功績は、今日まで語り継がれるべき重要な歴史的遺産と言えるでしょう。

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