新家

新家（しんけ）

新家とは、公家の家格の一つであり、文禄・慶長年間以降に成立した家々を指します。これはほぼ江戸時代のそれと重なります。これに対し、それ以前からの家は旧家と呼ばれます。堂上家137家のうち、68家が新家に相当します（ただし、広幡家・醍醐家を新家に含めるかについては議論があります）。新家のほとんどは、豊臣政権末期からの100年間、17世紀に設立されました。

堂上の新家

堂上の新家の設立は特に江戸時代初期に集中しています。これは、当時の徳川幕府の対朝廷政策により御所が多数設けられたためです。霊元天皇の禁裏御所、後水尾法皇の法皇御所、東福門院（徳川和子）の女院御所、後西上皇の新院御所、明正上皇の本院御所など、一時的に五つ以上の御所が同時に存在し、各御所に仕える公家が必要となりました。従来の旧家の公家だけでは需要を満たせず、幕府からの領地加増により、新しい公家の家を設立できる条件が整いました。

江戸幕府は禁中並公家諸法度などで朝廷を統制しましたが、朝廷の衰亡は望ましい状況ではありませんでした。また、朝廷権力を摂関家に独占させる体制は、排除された公家から反幕府感情を生む可能性がありました。そこで、本来出家させるはずの公家の嫡男以外の男子に家禄を与え、新しい家を興させ、公家の不満をそらすとともに、朝廷に必要な人員を確保しようとしました。南北朝時代から室町時代に断絶した家の家名復活も図られました。

新家のほとんどは羽林家・名家・半家に属し、旧家に比べて公卿に昇進しても非参議に終わる場合が多くありました。寛延3年（1750年）の官制改革により、新家は原則として参議・納言や議奏、武家伝奏などの要職に就けないことになりました（ただし、改革以前に要職への昇進の前例がある新家は対象外）。しかし、八条宮家から臣籍降下した広幡家と一条家から分家した醍醐家は清華家に加えられ、内大臣や左大臣にまで昇進した者もおり、他の新家とは待遇が異なりました。そのため、この両家を新家として一括りにすることには疑問視する説もあります。また、新家・旧家の別は勅命により変更される場合もありました。

新家の知行は江戸幕府が保証していたため、設立には幕府の了承が必要でした。元和以前に成立した新家は地方知行を与えられていましたが、元和以降は切米知行となるケースもありました。江戸時代には、摂関家・清華家・大臣家・羽林家・名家・半家の格式とは別に、旧家・地方知行の新家・切米知行の新家の間に格差がありました。新家出身者が大納言・中納言に昇進するのは困難で、就任できたとしても年齢が遅く、在任期間も短い傾向にありました。特に切米知行の家では、参議への昇進も厳しく、待遇の低い新家の中には、江戸時代を通じて非参議に留まった家もありました。武家伝奏や議奏への就任も、新家出身者は少数に留まりました。その一方で、天皇や院と血縁関係にある者や、長く側近として務めていた者に対しては、官位の昇進や知行の切り替えなどで厚遇されることもありました。また、旧家・新家を問わず、子弟が取り立てられて新家を創設できるのも「朝恩」の一種でした。

地下の新家

地下家の場合も、新たに官位を授けられた者やその家を新家と呼びました。実務官僚である地下は堂上よりも出入りが頻繁で、特に医療に関する専門知識や特殊技能が求められた典薬寮では、在野の医師が新たに官位を与えられて新家として地下家になる例が多かったようです。

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